エンドウ萎凋病菌の特異検出法および緊急対策に関する研究
- 課題番号
- 29031C
- 研究グループ
- 東京農工大学、和歌山県農業試験場
- 研究総括者
- 東京農工大学 有江力
- 研究タイプ
- 重要施策対応型
- 研究期間
- 平成29年(1年間)
- PDF版
- エンドウ萎凋病菌の特異検出法および緊急対策に関する研究(PDF : 985.4KB)
1 研究の目的・終了時達成目標
我が国未発生のエンドウ萎凋病菌(輸出国への栽培地検査要求の対象にしている我が国の植物検疫上重要な病原菌)の侵入・まん延を防ぐため、萎凋病菌の迅速な特異・ほ場診断技術の開発、侵入経路の解明、および、土壌消毒処理後の効果評価法の確立を目的とする。分子生物学的手法による萎凋病菌の特異・迅速診断技術およびほ場の萎凋病汚染診断技術をそれぞれ1つ以上開発、分子系統解析に基づき侵入経路を想定する。防除体系を1つ以上提案することを達成目標とする。
2 研究の主要な成果
(1)SIX13プライマーセットおよびピサチン分解酵素遺伝子(PDA)増幅プライマーセットを用いたPCR法およびより高感度なLAMP法によるエンドウ萎凋病菌の特異検出を可能にした。
(2) LAMP法による実ほ場土中の萎凋病菌の特異検出によるほ場診断の可能性を示した。有効性の確認を実施中(3月下旬までに人工汚染土壌および消毒処理前後の実ほ場土壌を用いて確認)。
(3)和歌山で分離された萎凋病菌(黄色)全菌株がrDNA IGS領域に基づく分子系統樹上で同一クラスターに含まれたため、和歌山への侵入は1回のイベントであり、侵入後に複数ほ場に拡大したことが推察された。また、2012~13年度に愛知および静岡で分離された株の一部と同一クラスターに含まれるため、これらの病菌は同一由来から侵入していたものが昨年度顕在化したことが示唆された。
(4)太陽熱・くん蒸による防除処理ほ場では萎凋病の発病が認められず、防除体系として提案できた。処理後の土壌中の萎凋病菌の存否を(2)等によって調査中(3月下旬まで)
(5)非病原性F. oxysporum菌による萎凋病生物防除効果を調査中(3月下旬まで)
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1)PCR法とLAMP法によるエンドウ萎凋病菌の特異検出技術を、擬似病徴提示植物、ほ場、種子等を対象とした植物検疫での実用化を図るためのマニュアルを作成する。
(2)特異検診、土壌検診および発病ほ場での防除技術の体系化し、エンドウの産地に普及を図る。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年度)は、和歌山県での発生ほ場における防除対策および検診技術の確立による萎凋病封じ込めを完了し、その後も防除を継続して実施し、萎凋病を根絶
(2) 最終的には、萎凋病の侵入の未然防止技術の完成
4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
(1)我が国未発生病原による病害の疑似症状が認められた場合、病原の確実な検出とそれに基づく防除対策、防除対策が有効であったかのほ場検診技術の確立が重要である。本研究は、エンドウ萎凋病においてこれを達成し、我が国未発生病原による病害の根絶に導く効果がある。本病の診断が遅れ、産地に定着、まん延することは、エンドウ産地の崩壊に繋がるが、本研究の成果が現場に導入されることにより、同定を含めた迅速な初動対応、封じ込め、発病リスクの判断が可能となる。このことは、発生地域における本病の根絶可能となり、産地を維持することに繋がる。(和歌山県のエンドウの全国シェア2位(14%)、生産額27億円(H26))
(2) 我が国未発生病原によるエンドウ栽培・生産の障害の危険性を回避、また、侵入に備えた対応策を講じることができ、食料の安定供給、かつ、安全・安心の担保に寄与できる。
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植物病理学研究室
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