イチゴの輸送適性に優れる品種育成を迅速に実現するゲノム育種法開発
- 課題番号
- 27003A
- 研究グループ
- 香川大学、大阪大学、農研機構・野菜花き研究部門
福岡県農林業総合試験場、栃木県農業試験場、
千葉県農林総合研究センター - 研究総括者
- かずさDNA研究所 磯部 祥子
- 研究タイプ
- 一般型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- イチゴの輸送適性に優れる品種育成を迅速に実現するゲノム育種法開発(PDF : 1199.5KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
イチゴの輸送適性に優れる品種を迅速に育成するために、循環選抜とゲノミックセレクション法を組み合わせた品種育成法を開発することを目的とする。イチゴは高次倍数性(八倍体)のゲノムを有するため、同祖染色体を識別するイチゴのゲノム情報を整備し、得られた情報を活用して予測モデルに基づく選抜マーカーを選定する手法を開発する。また、選抜により改良された集団から果皮強度・果肉硬度に優れる交配母本を開発することを目標とする。
2 研究の主要な成果
(1)連鎖地図、染色体観察、染色体マイクロダイセクション法、ならびに全ゲノム解析結果を組み合わせて染色体毎のゲノム配列を世界で初めて整備し、同祖染色体の識別を可能にした。
(2)機械学習により予測モデルを生成するEGGS(Ensemble-based Genetic and Genomic Search)法のソフトウエアを開発し選抜マーカーの選定を行うとともに選抜マーカーによる遺伝子集積のシミュレーションを実施した。
(3)開発した手法は実生苗での選抜を基本とし、予測モデルによる幼苗選抜と予測モデルと形質評価値を併用した本圃での選抜による年2回の選抜を実施した。
(4)複数の親に由来するゲノムがシャッフリングされた集団を0世代として開発手法による選抜を実施し、有用遺伝子の蓄積を実証するとともに、果皮強度・果肉硬度に優れる交配母本を開発した。
公表した主な特許・論文
(1) Yanagi T. et al. Sequence analysis of cultivated strawberry (Fragaria × ananassa Duch.) using microdissected single somatic chromosomes. Plant methods, 13:91 (2017)
(2) Nagano S. et al. Discrimination of candidate subgenome-specific loci by linkage map construction with an S1 population of octoploid strawberry (Fragaria × ananassa). BMC genomics 18時37分4 (2017)
(3) Wada T. et al. Development and characterization of a strawberry MAGIC population derived from crosses with six strawberry cultivars. Breeding Sci. 67(4):370-381 (2017)
3 今後の展開方向
(1) 本研究で開発したゲノム育種法の簡易・低コスト化を図り、育種現場での普及を目指す。
(2) 開発された果皮強度・果肉硬度に優れる交配母本を利用して、輸送適性に優れかつ果実品質など他形質にも優れる品種の開発を行う。
【今後の開発目標】
(1) 2年後(2019年度)は、遺伝子型解析法の改良を行い、解析コストを50%削減する。
(2) 5年後(2022年度)は、果実品質を向上させ、市場性のある品種候補を育成する。
(3) 最終的には、高次倍数性種の量的形質を迅速に改良するゲノム育種法を確立する。
4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 輸送性向上による販路拡大により国内の市場を10%拡大、生産量の10%を輸出可能にしたとして、340億円の経済効果とイチゴ農家の経営安定化に貢献できる。
(2)優れた品質の日本のイチゴを海外に輸出することで、世界の「ICHIGO」としてジャパン・ブランドの発信源となり、農業全体の活性化を牽引する。
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