「ひとめぼれ」大規模交配集団を用いた有用遺伝子単離と遺伝子相互作用解明
- 年度
- 2018
- ステージ
- シーズ創出
- 分野
- 農業(水稲)
- 適応地域
- 東北
- キーワード
- 水稲、ゲノム育種、重要形質遺伝子同定、エピスタシス、Nested Association Mapping、多収性品種
- 課題番号
- 27007A
- 研究グループ
- (公財)岩手生物工学研究センター、
岩手県農業研究センター、京都大学 - 研究総括者
- (公財)岩手生物工学研究センター 阿部 陽
- 研究タイプ
- 一般型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 「ひとめぼれ」大規模交配集団を用いた有用遺伝子単離と遺伝子相互作用解明(PDF : 992.7KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
東北地方の水稲生産性を飛躍的に高めるために不可欠な水稲の重要形質(病害抵抗性等)にかかわる遺伝子の迅速な同定とそれら遺伝子領域を主力品種の「ひとめぼれ」に導入した育種素材の作出を目的とする。具体的には、イネで初めて育成した「ひとめぼれ」大規模組換え近交系統群(RILs)と新規ゲノム解析法を活用して、多数の重要形質の遺伝子領域を同定し、遺伝子間相互作用(エピスタシス)を解明すること、および遺伝子領域のみを「ひとめぼれ」に導入した準同質遺伝子系統を作出することを達成目標とする。
2 研究の主要な成果
(1) 「ひとめぼれ」大規模RILs3,000系統を用いたNested Association Mapping(NAM)法により稈長、穂数、一穂籾数、籾サイズ、SPAD値分げつ角度など、多収性等に関与する22の遺伝子領域を同定した。
(2)量的形質のエピスタシス解析プログラム「RILStEp」を開発し、多収性等に関与する形質について遺伝子間相互作用を検出した。
(3)いもち病菌感染時の網羅的遺伝子発現データの連関解析(eQTL解析)により発現量がcis座またはtrans座で制御されている遺伝子を同定することに成功した。
(4)多収性等に関与する新規同定重要遺伝子領域を保有する「ひとめぼれ」準同質遺伝系統を作出した。
公表した主な特許・論文
(1) 阿部陽他.次世代シーケンサーを活用した全ゲノム解析によるイネ育種.生化学88,44-53(2016).
(2) Fujisaki et al. Rice Exo70 interacts with a fungal effector, AVR-Pii and is required for AVR-Pii-triggered immunity. The Plant Journal 83: 875-883 (2015).
3 今後の展開方向
(1) 「ひとめぼれ」準同質遺伝子系統の交配と選抜によって重要遺伝子を集積した系統を作出し、形質特性と実用性を精査して、東北地方に適応した新品種の育成を目指す。
(2) 重要形質遺伝子の導入効果と遺伝子間相互作用を明らかにし、形質発現の全貌を解明する。
【今後の開発目標】
(1) 2年後(2019年度)は、多収性に関与する重要遺伝子を集積した系統を作出し、特性調査を開始する。
(2) 5年後(2022年度)は、多収性に関与する重要遺伝子を集積した良食味超多収品種候補を育成する。
(3) 最終的には、目標形質の発現を自在に調節・制御可能な高度デザイン育種を確立する。
4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 東北地方の栽培に最適な新品種の育成と普及により、栽培環境にも安定な高生産性と高収益性を備えた水稲生産を実現し、稲作農家の経営安定化に貢献する。
(2) わが国における稲作の高生産性と高収益性の達成は、米の国際競争力を高め、水田農業の維持とともに、良質で安定的な国民の主食料の確保に貢献する。
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(公財)岩手生物工学研究センター
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