耐病性向上および根寄生雑草防除に活用するための菌根菌共生最適化技術の開発
- 課題番号
- 27004A
- 研究グループ
- 宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センター、東京大学大学院農学生命科学研究科、大阪府立大学大学院生命環境科学研究科、福井県立大学生物資源学部
- 研究総括者
- 宇都宮大学 米山 弘一
- 研究タイプ
- 一般型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 耐病性向上および根寄生雑草防除に活用するための菌根菌共生最適化技術の開発(PDF : 1000.9KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
菌根菌や根寄生雑草は植物の根から分泌されるシンビオラクトン(SBL)と命名した化学物質を認識して共生や寄生を開始する。本研究はSBLを質的・量的に制御することにより、菌根菌共生による病害抵抗性の向上や根寄生雑草の防除を可能とする画期的な技術の開発を目的とする。このため、SBLの生合成経路の完全解明と、その情報に基づいたSBLの生合成・機能阻害剤と特異的なアゴニスト(作動薬)を創製することを達成目標とする。
2 研究の主要な成果
(1)イネとトマトにおいて菌根菌共生が病害抵抗性を付与するしくみを明らかにした。また、その効果を増強するSBL制御剤Aを創製した。
(2)イネやトマトの生育に影響を与えずに根寄生雑草の寄生を抑制するSBL制御剤Bを創製し、その標的となるタンパク質を明らかにした。
(3) 仮想中間体や安定同位体標識化合物を合成して、SBL生合成下流における植物種共通の経路を明らかにした。また、生合成中間体の中に菌根菌の共生を促進するものを見出した。
公表した主な特許・論文
(1) Brewer, P.B. et al. LATERAL BRANCHING OXIDOREDUCTASE acts in the final stages of strigolactone biosynthesis in Arabidopsis. PNAS, 113, 6301-6306 (2016).
(2) Mori, N. et al. Carlactone-type strigolactones and their synthetic analogues as inducers of hyphal branching in arbuscular mycorrhizal fungi. Phytochemistry, 130, 90-98 (2016).
(3) Yoneyama, K. et al. Conversion of carlactone to carlactonoic acid is a conserved function of MAX1 homologs in strigolactone biosynthesis. New Phytologist, in press (2018).
3 今後の展開方向
(1) SBL制御剤の作用機序の解明や、その化学構造の改良を行い、より効果の高い利用技術の開発を温室や圃場で進める。
(2) 製剤化や安全性試験などを農薬会社とともに進める。
【今後の開発目標】
(1) 2年後(2019年度)は、さらに効果の高いSBL制御剤の実用化技術を開発する。
(2) 5年後(2022年度)は、開発されたSBL制御剤の安全性評価を終了する。
(3) 最終的には、安心・安全な食品として受け入れられる植物免疫活性化剤を開発する。
4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 本技術による植物免疫の活性化は、菌根菌が共生する多くの作物に応用が可能であり、種々の病害に持続的な効果が期待される。これを活性化できる新規の作用点を有する薬剤の開発は、殺菌剤使用量の大幅な削減を可能とする(殺菌剤20%削減として100億円の削減)。
(2) わが国の農業生産において根寄生雑草による被害はないが、潜在的な脅威となっている。世界の作物生産を脅かしている根寄生雑草が侵入した場合には、国民の食料安全保障のために重要な技術となる。
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