積極的な光合成産物蓄積手法と萌芽制御によるアスパラガス長期どり新作型の開発
- 課題番号
- 27010B
- 研究グループ
- 農研機構九州沖縄農業研究センター、
長崎県農林技術開発センター、沖縄県農業研究センター - 研究総括者
- 農研機構九州沖縄農業研究センター 渡辺 慎一
- 研究タイプ
- 産学機関結集型 Bタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 積極的な光合成産物蓄積手法と萌芽制御によるアスパラガス長期どり新作型の開発(PDF : 1005.9KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
アスパラガスは、秋~春期には国産品が国内需要を満たしておらず、輸入品で補わざるを得ない。そこで、温暖な気象条件を有する九州地方及び亜熱帯で年間を通してアスパラガスの萌芽が可能な温度条件である沖縄県を対象に、追加立茎(栽培の途中で新しい親茎を追加すること)による光合成生産量の増加と萌芽抑制、親茎更新(古い親茎を新しい親茎に更新すること)による株の光合成活性維持によって貯蔵根への光合成産物蓄積を図り、秋~春期の国産アスパラガスの供給力を強化し長期どりが可能となる新作型の原型を開発する。
2 研究の主要な成果
(1)アスパラガスの光合成産物のやりとりは主に鱗芽群(地下茎の先端の芽の集合体)単位で行われること、親茎はぎ葉展開後に光合成産物を根に供給する役割を果たすようになることを明らかにした。
(2)九州では夏季の追加立茎により若茎萌芽が抑制されて秋季の貯蔵根糖度が上昇すること、沖縄では秋~冬期でも親茎更新後に若茎萌芽が促進されることを明らかにした。
(3)九州では、夏季の追加立茎と秋季のベンジルアミノプリン(BA)液剤処理の組み合わせにより、10月~4月の収量が慣行よりも20~30%増加することを明らかにし、作型モデルとして提示した。
(4)沖縄では、秋~春の間、時期にかかわらず親茎更新後に萌芽本数が急増し、11月親茎更新で最も収益性が高いことを明らかにし、作型モデルとして提示した。試算では、本作型が10ha普及すると、現在の11月の国産品流通量の10倍以上の量を出荷できる。
3 今後の展開方向
(1) 沖縄については、開発技術の普及の大きな阻害要因である茎枯病の克服のため、現在育成が進められている茎枯病抵抗性系統の導入について検討し、新産地形成をめざす。
(2)九州については、追加立茎時期における病害対策やBA液剤処理の効果の安定化等、技術改善を図った上で普及について検討する。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年度)は、沖縄では茎枯病抵抗性系統の生育や茎枯病抵抗性の評価に着手する。九州では追加立茎時の病害対策、BA液剤処理の効果の安定化技術について目途を立てるとともに、現地実証栽培に着手する。
(2) 5年後(2022年度)は、沖縄では茎枯病抵抗系統の特性や市場性評価に基づく現地導入条件を明らかにする。九州では現地実証結果を踏まえ、さらなる普及促進を行う。
(3) 最終的には、沖縄では10haの新産地の形成、九州では全面積の30%への導入を目標とする。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 沖縄での10haの新産地の形成により、現在国産品の非常に少ない11~12月に約1億円、九州では既存産地の30%(135ha)への技術導入により10月~4月に4~5億円の市場販売額増加が期待できる。
(2) アスパラガスの輸入量が多くなっている秋~春期における国産品の供給力強化、特に現在ほとんど国産品がない11月の安定した生産の実現により、国産品志向が強いアスパラガスの周年的な供給が可能となり、国民の豊かな食生活に大きく貢献できる。
この研究成果を活用しませんか?
この研究に関するご相談や質問等は、以下よりお問い合わせいただけます。
農研機構
九州沖縄農業研究センター 産学連携室
E-mail:q_info[at]ml.affrc.go.jp
[at]を@に置き換えてください。
TEL 096-242-7682