日本固有種で実現させる世界初のアスパラガス茎枯病抵抗性系統育成とマーカーの開発
- 課題番号
- 27002B
- 研究グループ
- 農研機構野菜花き研究部門、香川県農業試験場
東北大学、九州大学 - 研究総括者
- 農研機構野菜花き研究部門 浦上 敦子
- 研究タイプ
- 産学機関結集型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 日本固有種で実現させる世界初のアスパラガス茎枯病抵抗性系統育成とマーカーの開発(PDF : 1085.7KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
アスパラガスの茎枯病は、西南暖地の露地産地を壊滅状態に追い込んだ難防除病害である。しかし、アスパラガス種内には抵抗性がなく、薬剤防除を中心に総合的な防除対策を講じているが不十分である。
そこでこれらの問題を解決するため、あらたに作出した、茎枯病抵抗性を持つ野生種ハマタマボウキとの雑種後代を利用して、アスパラガスの抵抗性系統を育成するとともに、抵抗性選抜マーカーを探索し短期育種技術を開発する。
2 研究の主要な成果
(1)茎枯病抵抗性を示すハマタマボウキでは、茎枯病菌接種によりジャスモン酸生合成及びシグナル関連遺伝子群が特異的に発現誘導されることを見いだした。
(2)選抜した系統は、茎枯病菌の接種試験で、アスパラガスに比べ高い抵抗性を示した。
公表した主な特許・論文
(1) Abdelrahman, M. et al. Comparative de novo transcriptome profiling of Asparagus officinalis and A. kiusianus during the early stage of Phomopsis asparagi infection. Scientific Reports, 7, 2608 (2017)
(2) Kanno, A. et al. A method for sex identification in asparagus using DNA from seeds. Euphytica, 213: 223 (2017)
(3) Takeuchi, Y. et al. Features in stem blight resistance confirmed in interspecific hybrids of Asparagus officinalis L. and Asparagus kiusianus Makino. Horticulture J. (in press).
3 今後の展開方向
(1) 育成した茎枯病抵抗性系統の現地実証試験を実施して特性を評価し、品種登録を行う。さらに普及対象地域の奨励品種の認定を受け、普及を図る。
(2) 種間交雑系統である茎枯病抵抗性系統の採種の安定化を図る。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2020年)は、茎枯病抵抗性系統の種苗増殖と普及見込み地帯での試験栽培を開始する。
(2) 5年後(2023年)は、茎枯病抵抗性系統を育成し、品種登録を目指す。
(3) 最終的に、育成品種は、国内で400 haの普及が見込まれる。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 茎枯病抵抗性品種の普及により、国内産地への露地栽培の普及と安定化が期待でき、21億円の経済効果が見込まれると共に、殺菌剤散布回数の削減によって生産農家の経営安定化に貢献できる。
(2) 露地栽培の増加によって、安定した価格の安全安心な国産アスパラガスが多量に市場に出回り、栄養価が高く、低カロリーのアスパラガス消費が増加することで、国民の健康状態の改善が期待できる。
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浦上敦子
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