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農林水産技術会議

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植物潜在性ウイルスの機能を利用した生物系特定産業の新技術創出

年度
2016
ステージ
シーズ創出
分野
農業(果樹)
適応地域
全国
キーワード
リンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)、早期開花誘導、果樹類の遺伝子機能解析技術、植物ウイルス病防除、食べるワクチン
課題番号
26012A
研究グループ
岩手大学農学部
研究総括者
岩手大学 吉川 信幸
研究タイプ
技術シーズ【一般】
研究期間
平成23年~27年(5年間)
PDF版
植物潜在性ウイルスの機能を利用した生物系特定産業の新技術創出(PDF : 1002.7KB)

1 研究の背景・目的・目標

リンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)は果樹・野菜・花卉類に潜在感染する無害な植物ウイルスである。本研究では、外来遺伝子の発現・抑制用に構築したALSVベクターを利用して、(1)リンゴやナシの早期開花/世代促進技術の開発、(2)ウイルス誘導ジーンサイレンシング(VIGS)を利用した果樹類の遺伝子機能解析技術の確立、(3)植物ウイルス病防除のためのワクチン作出技術の開発、(4)ヒト病原体の「食べるワクチン」発現用ベクターへの改変を達成目標として実施した。

2 研究の内容・主要な成果

(1) 早期開花関連遺伝子を導入したALSVベクターをリンゴに感染させることで、従来5~12年を要したリンゴ実生苗の開花時期を発芽後2ヶ月程度に短縮し、1世代を1年以内に短縮する日本独自の技術を開発した。

(2) ALSVベクターを用いた果樹類のRNAi技術(VIGS)を確立し、これまで有効な方法がなかった果樹類の遺伝子機能解析を短期間に実施することを可能にした。

(3) ALSVのVIGS誘導能を利用したALSVワクチン株を作出し、各種野菜類でウイルス病の予防効果を実証すると共に、ALSVワクチン株を発病後に感染させると治療効果を示すことを明らかにした。

(4) ALSVベクターを改変し、ウイルス粒子表面に病原ウイルスのエピト-プ配列を提示できるベクターを開発することに成功し、ALSVを利用したヒト病原体の「食べるワクチン」作出する可能性を示した。

公表した主な論文

(1) Yamagishi, N. et al. Reduced generation time of apple seedlings to within a year by means of a plant virus vector: a new plant-breeding technique with no transmission of genetic modification to the next generation.
Plant Biotechnol. J. 12, 60-68 (2013).

(2) Tamura, A. et al. Preventive and curative effects of Apple latent spherical virus vectors harboring part of the target virus genome against potyvirus and cucumovirus infections. Virology 446, 314-324 (2013).

(3) Li, C. et al. Presentation of epitope sequences from foreign viruses on the surface of Apple latent spherical virus particles. Virus Research 190, 118-126 (2014).

3 今後の展開方向、見込まれる波及効果

(1) 本研究成果「早期開花技術」をリンゴの新品種の育種計画に組み入れ、マーカー選抜育種等と組み合わせることで、これまで数十年を要していた新品種育成期間をおおよそ5分の1程度に短縮できる。

(2) 「果樹の遺伝子機能解析技術」は、「早期開花技術」と共に果樹類のポストゲノム研究の中心的なツールになり、果樹類の遺伝子機能解析や品種改良など基礎および応用研究が大幅に効率化される。

(3) 『ヒト病原体の「食べるワクチン」発現用ベクター』の開発は、将来的には、迅速なワクチン生産や減感作療法によるヒトの健康安全確保や疾病対策に繋がることが期待される。

4 開発した技術・成果が活用されることによる国民生活への貢献

果樹類で問題となっている地球温暖化による障害の発生や栽培地の変化に対応できる品種、病害抵抗性など環境保全型(減農薬)に対応できる品種の開発が迅速に行えるようになり、国民生活に大きく貢献できる。

この研究成果を活用しませんか?

この研究に関するご相談や質問等は、以下よりお問い合わせいただけます。

岩手大学

TEL 019-621-6150

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