脂肪酸製剤を用いた油脂の低カロリー化による高付加価値食品の製造

1 研究の背景・目的・目標

国民の健康維持に向けて、高い嗜好性を有した低カロリーの食品開発が求められている。一方、地域の地場食品産業は、新興国に対する競争力を必要としており、付加価値を格段に高めることが必要である。健康に資する高付加価値を達成するために、これまでに油脂の代替えとして脂肪酸を添加することによって、多くの食品素材が低脂肪・低カロリー化され、しかも嗜好性を維持できることを明らかにしてきた。本課題では、この技術をさらに多様な食品に応用し、多くの食品への高付加価値賦与を目的とする。

2 研究の内容・主要な成果

（1） 複数の脂肪酸5種類を混合してアイスクリームの嗜好性増強に特化した脂肪酸製剤を開発した。油脂感が高まり風味のバランスが向上した。また、脂肪酸の分散を著しく高め、実用化に進むことができた。

（2） 低カロリーアイスクリームへの応用可能性を検討し、「カロリーコントロールアイス（モナカアイス）」に採用。平成26年秋に市場導入した。平成27年秋にカロリーコントロールアイスシリーズ全品に導入するに至った。

（3） 品質保証の観点から微量の脂肪酸添加による嗜好性増強の機構を解析し、嗅覚が関与していることを動物実験で実証した。

（4） マウスの嗅細胞微絨毛にCD36が発現していることを発見した。超微量脂肪酸の受容に関与している可能性を示唆した。

公表した主な論文

（1） The opioid system majorly contributes to preference for fat emulsions but not sucrose solutions in mice.
Sakamoto et al. 2014 Biosci.Biotech. Biochem 79, 658-63 油脂の嗜好性に対するオピオイド系の寄与について砂糖との比較などの詳細な検討。

（2） Expression of CD36 by olfactory receptor cells and its abundance on the epitheliac surface in mice. Lee et al.2015 Plos One 10, e0133412 マウス嗅細胞にCD36が発現していた。嗅粘膜上皮にも高濃度に見られた。

（3） Mechanisms involved in guiding the preference for fat emulsion differ depending on the concentration.
Sakamoto et al. 2015 J.Nutr.Sci.Vitaminol. 61, 247-254 濃度の異なる油脂では嗜好性のメカニズムが異なることを示し、微量脂肪酸の嗜好性には嗅覚が重要であることを示した。

3 開発した技術･成果の実用化・普及の実績及び取り組み状況

（1） 低カロリーアイスクリームへの応用可能性を検討し、「カロリーコントロールアイス（80kcal モナカアイス）」に採用され、平成26年度に上市されている。

（2） 平成27年秋に江崎グリコ社のカロリーコントロールアイスシリーズ全品に導入するに至った。好評販売中である

4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献

（1） 高い嗜好性を有した低カロリーの食品開発によって、健康と嗜好性の両立という国民のニーズに応えることができた。

（2） 食品の付加価値を著しく高める技術開発基盤となり国際競争力を高めることに寄与した。

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