コエンザイムQ10高度生産酵母の開発
- 課題番号
- 27012A
- 研究グループ
- 島根大学生物資源科学部、研究機構
- 研究総括者
- 島根大学 川向 誠
- 研究タイプ
- 一般型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- コエンザイムQ10高度生産酵母の開発(PDF : 886.5KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
コエンザイムQ10(CoQ10) は、その抗酸化作用により皮膚の劣化抑制効果を示し、体内のエネルギー産生を活性化する作用により疲労回復力を与える。CoQ10を化粧品や食品サプリメントに含有させることにより、それらの効果が期待でき、国内ヘルスケア産業の活性化に繋がる。本研究は、CoQ10を飛躍的に生産できる分裂酵母を開発することを目的としている。分裂酵母はビールの製造に使用されているという長年の食習慣があることから、この酵母を生産微生物とできれば、消費者への安心感に繋がる。CoQ10の生産性を上昇させるためには生合成の理解を進めることが必須で、その知識を背景として、遺伝子増強、培養条件の検討を複合的に組み合わせ、最終的に生産性を大幅に増強したCoQ10生産分裂酵母の育種を目標とした。
2 研究の主要な成果
(1)分裂酵母CoQ10合成に必須であるが、機能未知であったcoq4, coq8, coq9遺伝子破壊株のCoQ10生合成の中間体を同定し、プレ二ル化パラアミノ安息香酸の脱アミノ化反応に重要であることを見出した。
(2)分裂酵母のミトコンドリア局在を示すタンパク質をコードする遺伝子400種の中から、CoQ10生産に影響するものを見い出し、その中に新規遺伝子coq12を発見した。
(3)分裂酵母のCoQ10生産のための、遺伝子発現条件、培養条件を検討し、最適化条件を見出した。
(4)遺伝子組換え体を利用し、培養条件を検討することにより、分裂酵母でのCoQ10生産性を最大、8.4倍まで増強することに成功した。
公表した主な特許・論文
(1) Kawamukai, M. Biosynthesis of coenzyme Q in eukaryotes. Biosci Biotechnol Biochem. 80,23-33 (2016)
(2) Kawamukai, M. Biosynthesis and applications of prenylquinones. Biosci Biotechnol Biochem. (in press)
(3)戒能智宏らコエンザイムQ10増産技術の開発バイオインダストリー34、63-71(2017)
3 今後の展開方向
(1) 構築したCoQ10生産酵母の生産性をさらに増大させるために、基礎的な代謝経路の理解とその増強を行う。
(2) CoQ10生産酵母の実用化に向け、増殖阻害を回避しつつ生産性を上昇させるための最適条件を見出す。
(3) CoQ10生産酵母によるCoQ10大量生産の実証実験を進める。
【今後の開発目標】
(1) 2年後(2019年度)は、現在達成しているCoQ10生産性を倍化させる。
(2) 5年後(2022年度)は、増殖能力が高い状態でのCoQ10の高生産を実現する。
(3) 最終的には、CoQ10生産酵母を実用化する。
4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1)酵母は、微生物種の中でも食習慣が長い微生物種である。このような酵母を用いてCoQ10を生産することは、安全な製品の提供に繋がる。
(2) 世界の市場規模が1,000億円あるCoQ10の価格が適性で、純度の高い、安全な食品サプリメントとして提供できる純国産の生産システムを構築することは、国民生活に安心を与えることができる。
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川向 誠
TEL 0852-32-6583
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