オメガ3脂肪酸の発酵生産ならびに高機能化技術開発
- 課題番号
- 26002AB
- 研究グループ
- 国立大学法人 京都大学、日清ファルマ株式会社
国立研究開発法人 理化学研究所、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所、国立大学法人 東京大学 - 研究総括者
- 国立大学法人 京都大学 小川 順
- 研究タイプ
- 産学機関結集型
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- オメガ3脂肪酸の発酵生産ならびに高機能化技術開発(PDF : 1167.2KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
オメガ3脂肪酸は、有用な生理機能が多数報告されており、積極的な摂取が奨励されている。しかし、魚油以外に適切な供給源はなく、生理機能を担う代謝物も未同定であった。本研究では、オメガ3脂肪酸の新たな供給法としての発酵生産技術の開発と、新たな機能性オメガ3脂肪酸代謝物の創出を目的とした。実用的発酵生産株の育種と、生理機能が明確な新たなオメガ3脂肪酸代謝物をターゲットに、得られた成果を活用した新規オメガ3脂肪酸供給法・新規機能性食品素材・プロバイオティクスの開発を目指した。
2 研究の主要な成果
(1) 糸状菌の分子育種株により70%以上、非組換え様育種株により50%以上のオメガ3脂肪酸 (EPA:エイコサペンタエン酸) 含有油脂生産に成功した。
(2) α-リノレン酸、EPA、DHA (ドコサヘキサエン酸) を変換する食品由来の微生物を見いだし、変換物の生理機能を解明した。
(3)微生物が産生するオメガ3脂肪酸変換物17,18-EpETE (17,18-Epoxy-eicosatetraenoic acid) と、KetoA (10-oxo-c12,c15-octadecadienoic acid) の抗炎症効果、代謝異常改善効果、免疫調節機能を明らかにした。
公表した主な特許・論文
(1) 小川順他.脂質バランス栄養食品を創出する新規オメガ3脂肪酸素材の開発.JATAFFジャーナル4月号, (2016).
(2)國澤純他.食事性脂質を介した腸管免疫ネットワークの形成.JATAFFジャーナル5月号, (2016).
(3)有田誠. ω3脂肪酸の代謝と疾患制御のメタボロミクス. 実験医学増刊号「脂質疾患学」33, 2361-2366 (2015).
3 今後の展開方向
(1) オメガ3脂肪酸含有脂質生産の低コスト化の検討を行う。
(2)発酵オメガ3脂肪酸、あるいはその変換物を含有する新規機能性食品、プロバイオティクスの開発と機能解析を行う。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年)は、オメガ3脂肪酸含有発酵生産油脂の低コスト大量生産技術を開発する。
(2) 5年後(2022年)は、オメガ3脂肪酸含有脂質やオメガ3脂肪酸変換物を活用した新規機能性食品、プロバイオティクスの商品化や、医薬品シーズの創出(臨床試験の開始)を目標とする。
(3) 最終的に、上記製品群の供給を通して、食品素材製造業ならびに加工業界の活性化、消費者における健康増進・QOL(クオリティオブライフ)の向上に貢献する。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) オメガ3含有油脂の関連市場は2兆円規模になるが、現在、ほぼすべて魚油により供給されている。微生物によるオメガ3脂肪酸発酵生産技術は、魚油を代替する油脂の供給を可能とする。
(2) オメガ3油脂は世界的にも需要が大きく、日本発の技術として、世界を牽引することができる。開発した技術を基盤とした新規機能性食品・プロバイオティクスは、国民の健康増進に役立つことから、新規需要の開拓も見込め、食品産業、醸造産業等への波及効果も高く、大きな経済効果が期待できる。
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京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻
発酵生理及び醸造学分野 小川順
TEL 075-753-6113
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