林産物トチュウエラストマー由来の新素材ポリマー生産技術の開発
- 課題番号
- 25040B
- 研究グループ
- 国立大学法人 大阪大学大学院工学研究科
日立造船株式会社 - 研究総括者
- 大阪大学大学院工学研究科 宇山 浩
- 研究タイプ
- 産学機関結集型A
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- 林産物トチュウエラストマー由来の新素材ポリマー生産技術の開発(PDF : 1040.8KB)
1 研究の背景・目的・目標
木材価格の低迷により国内林業の経営は厳しい。国内林業振興を図るには、林産物由来の新規高付加価値製品の開発が必要とされる。落葉高木のトチュウは組織内にトランスポリイソプレ ンを蓄積する性質を持つ。
トランスポリイソプレンはバイオマスプラスチックとして産業利用が期待される素材である。そこで、トチュウから取り出したこのトランスポリイソプレンを新素材ポリマーとして用いる高機能材料開発と、トチュウトランスポリイソプレンの高生産技術開発を行うことにより、新たな高付加価値林産物の生産スキームを確立する。
2 研究の内容・主要な成果
(1) トチュウ由来のトランスポリイソプレンの誘導体化技術と汎用樹脂とのブレンド技術を開発し、耐衝撃性を中心に実用レベルの性能を有するブレンド物を創製した。
(2) トランスポリイソプレン用の新規相溶化剤を用いる汎用樹脂との動的架橋の基盤技術を開発した。
(3) トチュウ高発芽技術の開発と芽生えの育成により、トチュウ種子よりトチュウ稚樹を1000本単位で生産するスキームを確立した。
(4) 高活着な芽継ぎ法開発とトランスポリイソプレン含量増に効果的な施肥設計により、トランスポリイソプレン生産に優れた株の量産と育成を通じて、トランスポリイソプレン高生産が出来るようになった。
公表した主な特許・論文
(1) 特願2013-205759 形状記憶性樹脂組成物 (宇山浩他:国立大学法人大阪大学、日立造船株式会社)
(2) Tsujimoto, T. et al. Maleated trans-1,4-Polyisoprene from Eucommia ulmoides Oliver with Dynamic Network Structure and Its Shape Memory Property. Polymer 55, 6488-6493 (2014).
(3) 宇山浩他、バイオベースエラストマーの新展開.高分子 64, 776-780 (2015)
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1) トランスポリイソプレンを基にした再生可能資源由来の新規高機能材料が開発され、新たなバイオマスプラスチックとして工業利用できるようになる。
(2) 果皮販売により国内林家が毎年収入を得られる新たな植林用樹種としてトチュウが利用できるようになる。
4 開発した技術・成果が実用化されることによる国民生活への貢献
(1) 林産物由来の新規バイオマスプラスチックとして利用が進む結果、国内化学産業の発展に役立つ。自動車産業等での利用を想定し、最終的に売上高100億円事業を目指しているが、その場合、化学製品、運輸部門等への波及効果計約220億円が見込まれ、新産業育成に役立つ。
(2) 国内耕作放棄地や植替え期を迎えた人工林に対しトチュウの植林が行われ、トチュウ林より得られるトチュウ果皮の販売によって林業従事者は年間数百万円の収入増が図れる。
この研究成果を活用しませんか?
この研究に関するご相談や質問等は、以下よりお問い合わせいただけます。
大阪大学
TEL 06-6879-7364
同じ分野の研究成果
- 林業・林産
- 竹林
- バンブーリファイナリー技術開発による竹林有効利用の先進的九州モデル構築
- 林業・林産
- 木材利用
- スギの圧縮と摩擦特性を活かした高減衰耐力壁の開発
- 林業・林産
- 竹林
- 侵略的拡大竹林の効率的駆除法と植生誘導技術の開発
- 林業・林産
- 森林病害虫
- 薬剤使用の制約に対応する松くい虫対策技術の刷新