バンブーリファイナリー技術開発による竹林有効利用の先進的九州モデル構築
- 課題番号
- 27006A
- 研究グループ
- 九州大学農学研究院・総合理工学研究院、宮崎大学農学部、旭化成ケミカルズ(株)、延岡市SATOYAMA保全推進会議
- 研究総括者
- 九州大学 堤 裕司
- 研究タイプ
- 一般型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- バンブーリファイナリー技術開発による竹林有効利用の先進的九州モデル構築(PDF : 1036.7KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
プラスチックによる代替品の普及や輸入タケノコの増加によって竹林管理が放棄され、荒廃竹林の広がりが問題となっている。本研究では、竹成分をリファイナリー(化学的な分離や変換)技術により、今までに無かった付加価値をつけることを目的とし、タケ成分の分離と各成分の化学・微生物変換による高付加価値有用物生産技術のシーズ提供と竹林有効利用の経済性評価による安定供給量の算定を目標とした。
2 研究の主要な成果
(1)タケソーダリグニンを分画し、特定の水溶性リグニン分画物に高い抗腫瘍活性、抗酸化活性を発見した。
(2) (1)の酸沈殿物(高分子リグニン)を適切な溶媒に可溶化し、酢酸セルロース系助剤とともに紡糸、加熱炭素繊維化し、数10~200nmの繊維幅の炭素ナノ繊維の生成を確認した。
(3)ヘミセルロース(キシラン)およびセルロースを資化できる担子菌を選抜し、遺伝子改変で有用物生産能を与えることで、野生株ではほぼ生産しなかったキシリトール、グルコースなど有用物の蓄積に成功した。
公表した主な特許・論文
(1) Tsuyama T. et al. Accumulation of sugar from pulp and xylitol from xylose by pyruvate decarboxylase-negative white-rot fungus Phlebia sp. MG-60. Biores. Technol. 238, 241-247 (2017).
(2) 堤祐司他. 竹の統合バイオリファイナリーに向けて. Cellulose Communication, 24(4), 168-174 (2017) .
3 今後の展開方向
(1) タケリグニンの有望な化学変換物の高性能化、プロセス最適化による高収率化で最終製品を追求する。
(2) 収益性の高いヘミセルロースの生物変換物(医薬品、食品等)の生産を目指す。
【今後の開発目標】
(1) 2年後(2019年度)は、動物実験による各種生理活性効果の実証と活性成分の単離、炭素繊維の物理特性測定、組み換え担子菌による新たな有価物の生産。
(2) 5年後(2022年度)は、生理活性成分の健康食品、化粧品等への実用化適合試験開始、試験プラントレベルの炭素繊維の作成、セルロースおよびヘミセルロースからの医薬レベルの高付加価値成分生産。
(3) 地域において、竹の伐採から高付加価値製品の生産・販売まで一貫することで、竹林からの収益に寄与し、地方創生の一助とする。
4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 延岡市内竹林保有農家全体で試算して、竹材販売で年間2,400万円の収入増。すべての生産物の商業的製造に成功した場合、100億円以上の売り上げが見込まれる。
(2) 竹林からの収益増加は農家に対する適切な竹林管理の動機付けとなり、荒廃竹林問題の解決による地域防災、里山の活性化と“地方創生”へ繋がる。
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九州大学農学研究院
堤
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