西南日本に適した木材強度の高い新たな造林用樹種・系統の選定及び改良指針の策定
- 課題番号
- 27003B
- 研究グループ
- 森林総合研究所林木育種センター
広島県林業技術センター
鹿児島大学、中国木材株式会社 - 研究総括者
- 森林総合研究所林木育種センター 生方 正俊
- 研究タイプ
- 産学機関結集型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 西南日本に適した木材強度の高い新たな造林用樹種・系統の選定及び改良指針の策定(PDF : 997.6KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
西南日本では強度・成長ともに優れた樹種がなく輸入材に大きく依存している状況にあることから、新たな造林用樹種が求められている。このため、中国、台湾原産のコウヨウザンに着目し、国内の林分における成長及び適応性調査、実際に試作した木材製品を用いた木材特性の評価、さらには国内林分の遺伝的多様性の評価、優良系統の選定及び今後の改良指針の策定を行う。
2 研究の主要な成果
(1)コウヨウザンの成長が適地では同一地域のスギ1等地の約2倍であることを明らかにし、我が国での生育適地が照葉樹林帯であることを示した。
(2)壮齢林の材料で試作した平角材では曲げヤング係数においてE110相当のものが多く、曲げ強度においてスギを上回るばかりでなく、強度に優れているヒノキと同等の性能を示した。
(3)DNA分析によって国内コウヨウザンを中国中南部由来、中国東部由来、台湾由来の3つに分類できた。
(4) 22の優良クローンを選定するとともに、種子及びさし木による増殖法を明らかにした。
公表した主な論文
(1) 近藤禎二他.コウヨウザン研究の現状.森林遺伝育種 6, 143-147 (2017)
(2) 涌嶋智・渡辺靖崇.コウヨウザンの材質.森林遺伝育種 6, 148-154(2017)
(3) 大塚次郎他.コウヨウザンの球果と種子の形質および精選手法について.関東森林研究 68(2) 129-132 (2017).
3 今後の展開方向
(1)コウヨウザン普及のために採種園・採穂園整備、苗木生産についての技術開発を行う。
(2)コウヨウザンの優良系統をさらに選定するとともに、それらを用いた育種を推進する。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年)は、採種園・採穂園整備と苗木生産の技術開発を行う。
(2) 5年後(2022年)は、安定した苗木生産を目標とする。
(3) 最終的には、年間10万本程度の苗木生産が見込まれる。造林意欲の向上、林産業の活性化が見込まれる。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 森林の収穫量が2倍、材の価格が4割増しとなり、西南日本のスギ造林面積の1割をコウヨウザンにすることで約2200億円の経済効果が追加できる。
(2) 苗木生産は近年停滞しているが、今後、コウヨウザンの造林意欲が発生することで生産の増加、ひいては林業の活性化が期待できる。
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