国内林産資源を活用したナノセルロース複合スーパーマテリアルの商品開発
- 年度
- 2018
- ステージ
- 実用技術
- 分野
- 林業・林産(木材利用)
- 適応地域
- 全国
- キーワード
- カラマツ、セルロースナノファイバー(CNF)、TEMPO酸化CNF(TOCN)、弾性混練、セルレーション理論
- 課題番号
- 27006C
- 研究グループ
- 信州大学、東京大学大学院、東京工業大学物質理工学院
京都工芸繊維大学、長野県森林組合連合会、日信工業(株)
バンドー化学(株)、横浜ゴム(株)、ナノコンポジット研究会 - 研究総括者
- 国立大学法人信州大学 カーボン科学研究所 野口 徹
- 研究タイプ
- 現場ニーズ対応型
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 国内林産資源を活用したナノセルロース複合スーパーマテリアルの商品開発(PDF : 706.2KB)
1 研究の目的・終了時達成目標
国土の67%を占める森林資源、あるいは廃材、古材を含む木質バイオマスを循環利用し、林業の成長産業化を推進する。長野県ではカラマツを含む人工林は、その多くが間伐を必要とする林齢を迎えており、有効利用が強く求められている。本研究では東京大学磯貝研究室で開発されたTEMPO触媒酸化法により調製される繊維径3~4nmの極細繊維を、信州大学にて開発した弾性混練法により発現するセルレーション構造を用いてゴム製品などの複合化に応用し、高強度で柔軟性を持つスーパーマテリアルの製品化を目指す。
2 研究の主要な成果
(1) 長野県産カラマツ材からTEMPO酸化触媒法によりセルロースナノファイバー(以下CNF)の作製を実現した。
(2) 複合化方法として、ラテックスゴムとCNF水分散液を用いる二段階弾性混練法、並びに汎用ゴムとCNF繊維体を用いる一段直接混練(CWSolid)法を開発した。
(3) 複合材中にCNFが形成する立体構造を解析し(セルレーション構造)、その補強メカニズムを解明した。
(4)以上を活用した産業機器用ゴム部品ならびエコタイヤ用新素材開発を進め、製品適用評価を開始した。
公表した主な特許・品種・論文
(1)特願 2017-002760 繊維材料及び繊維材料の製造方法並びに複合材料及び複合材料の製造方法(日信工業株式会社:国立大学法人信州大学)
(2)特願 2017-002761 膨潤繊維材料及び膨潤繊維材料の製造方法並びに複合材料及び複合材料の製造方法(日信工業株式会社:国立大学法人信州大学)
(3)特願 2017-002762 ゲル状態及びゲル状態の製造方法並びに複合材料及び複合材料の製造方法(日信工業株式会社:国立大学法人信州大学)
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1)長野県産カラマツ材チップから、主酸化剤を従来と同等の量でCNF収率90%以上を達成した。工業化に向けて更に高効率化を図る。活用に向けては木材調達の一貫したシステム構築が必須である。
(2)CNF/ゴム複合による新素材を用いた商品化を進める(エコタイヤ、自動車用部品、産業機器ゴム部品)。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年度)は、CNF調製の更なる効率化と、ゴム複合材の製品適合評価を完了する。
(2) 5年後(2022年度)は、国内産針葉樹の供給システムを構築し、補強材市場にてCNF10%を見込む。
(3) 最終的には、国内森林資源の活用によって林業活性化と関連事業の拡大を図り、脱カーボン化社会の実現に貢献する。
4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
(1) CNFの補強材市場における国内市場10%を想定すると、針葉樹素材43万m3、56億円/年となる。又、世界市場10%は素材783万m3、1,011億円/年が期待される(H28年長野産カラマツ木材価格より試算)。
(2) 本研究成果を活用した新素材によるエコタイヤ、Vベルトは、自動車や資源開発・産業機器の軽量化と高耐久性の実現を可能とし、グリーンマテリアルとして環境型社会の実現に貢献する。
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(国)信州大学カーボン科学研究所
野口研究室
E-mail:noguchi[at]endomoribu.shinshu-u.ac.jp
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