スギの圧縮と摩擦特性を活かした高減衰耐力壁の開発
- 課題番号
- 27015A
- 研究グループ
- 富山県農林水産総合技術センター、京都大学生存圏研究所、東京都立産業技術研究センター、福井大学大学院工学研究科、椙山女学園大学生活科学部
- 研究総括者
- 富山県農林水産総合技術センター 若島 嘉朗
- 研究タイプ
- 一般型 Bタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- スギの圧縮と摩擦特性を活かした高減衰耐力壁の開発(PDF : 1108.8KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
国産材の主要な需要先である木造建築の耐震性を、木材の圧縮と摩擦特性を活かして飛躍的に高めた高減衰壁の開発を目的とする。このため、摩擦力を発生させる信頼性の高い木材圧締力の管理法を開発し、これを用いた摩擦接合部による高減衰構造システムを実現、振動試験によるその性能の実証を達成目標とする。
2 研究の主要な成果
(1)木材圧締力の長期的性能は促進処理(温度40℃・湿度87%)によって安全側に評価でき、処理後は安定した圧締力が維持できることを明らかにした。
(2)促進処理による前処理とトルク管理によるボルト締付けによって、木材圧締力の残存率を80%程度に留める圧締力管理法を開発した。
(3)木材の摩擦を用いたダンパーを一般的な木造住宅耐力壁をベースとする壁に分散配置することにより、工業材料を用いた従来製品の半分程度のコストで高減衰壁を実現した。
(4)開発した高減衰壁の建物耐力負担割合を35%とする建物では、耐震構造に比して建物損傷を半分以下に抑制できることを明らかにした。
公表した主な特許・論文
(1)松原独歩他.木材-ボルト接合における塑性域締付け軸力の締付けトルク算定法.木材学会誌63(4), 162-175 (2017).
(2) Matsubara, D. et al. Relationship between clamp force and pull-out strength in lag screw timber joints. Journal of Wood Science.63(6), 625-634 (2017).
(3) Matsubara, D. et al. Effects of tightening speed on torque coefficient in lag screw timber joints with steel side plates. Journal of Wood Science. (2017) Online First.
3 今後の展開方向
(1) 温湿度の影響を含む長期的木材圧締力維持のための最適な木材処理法を確立する。
(2) 安定した摩擦力を発生させる木製摩擦接合部の生産管理技術を確立する。
【今後の開発目標】
(1) 2年後(2019年度)は、木材圧締力維持を最大化する木材処理法を解明する。
(2) 5年後(2022年度)は、高品質な木製摩擦接合部の生産管理技術を確立する。
(3) 最終的には、大地震後も建物の継続使用を容易とする高減衰耐力壁を実現する。
4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1)100億円以上の市場規模がある木造住宅用制振技術を、木材を用いて従来の半分程度のコストで実現することにより、木材産業に大きな経済効果を生み出し経営安定化に貢献できる。
(2)大地震後も木造建物の損傷を抑制して継続使用を可能とし、居住者の生命および財産を守り、建物の長寿命化に貢献することができる。
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