未利用間伐材等を微粉砕して消化率を高めた新規木質飼料の開発およびTMRへの活用
- 課題番号
- 27017B
- 研究グループ
- 国立高等専門学校機構 秋田工業高等専門学校、
秋田県立大学(システム科学技術学部、生物資源科学部)、
農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター、
秋田県畜産試験場、本荘由利森林組合 - 研究総括者
- 国立高等専門学校機構 秋田工業高等専門学校 上松 仁
- 研究タイプ
- 重要施策対応型
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 未利用間伐材等を微粉砕して消化率を高めた新規木質飼料の開発およびTMRへの活用(PDF : 944.5KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
日本は粗飼料自給率100%を目指しているものの酪農経営においても輸入牧草に依存する等生産コストは厳しい状況にある。酪農家の経営基盤の改善が早急な課題である。一方、林業では国産材の利用量が年間成長量の26%であり、林業の再生には未利用間伐材等を含めた新たな木材需要の創出が急務である。本研究の目的は、間伐材等の未利用木質資源を省エネルギー型微粉砕機で微粉砕することにより、牛の消化率を高めた木質飼料(TMRに配合する木質飼料原料)を開発し、エコフィード発酵TMR※のセルロース系素材として活用することである。※食品製造副産物、食品残さを原料とする飼料を配合したTMR
2 研究の主要な成果
(1)省エネルギー型微粉砕機タンデムリングミルのリング・ロッド法による連続微粉砕物の製造費を28.9円/kgまで下げた。木質原料と飼料原料の混合粉砕および化学的処理により消化率を上げることができた。
(2)牛の第一胃から採取したルーメン菌の連続嫌気培養(人工ルーメン)により、飼料が消化されて生成する揮発性脂肪酸(VFA)を定量することにより飼料の栄養価をVFA生成量(mol/kg)で表わすことができた。
(3)地域の食品製造副産物をエコフィードとして活用して配合飼料を50%削減し、粗飼料割合を50%DMまで高めた、微粉砕木粉を9.0%DM含むエコフィード発酵TMRを開発した。
(4)木質飼料を素材とするエコフィード発酵TMRを高泌乳牛に給与し、生産性(乳量)、品質(乳成分)、健常性(血液生化学性状)への影響がないことを確認した。
公表した主な特許・論文
(1)特願2017-121265 家畜飼料の製造方法および家畜飼料(出願人:秋田県立大学、国立高専機構、農研機構)
(2) 高橋武彦他. 木質系バイオマスのkgクラス粉砕のためのリング媒体利用粉砕機の開発. 設計工学52(7) 451-464(2017)
(3)高橋武彦他. 初期投入粒径の低減によるリング媒体利用粉砕の省エネルギー化の検討. 秋田県立大学ウェブジャーナルB、3(9)20-24(2016)
3 今後の展開方向
(1)木質原料と飼料原料の混合粉砕と化学的処理を併用して木質飼料のTDN含量を55%に上げる。また、タンデムリングミルによる連続粉砕の製造コストの更なる低減を目指す。
(2)出願した特許を実施する為に、複数の業者と企業の連携からなるエコフィード発酵TMRの製造と供給のためのビジネスモデルを構築して全国に展開して行く。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年度)は、木質飼料のTDN含量を55%と工場渡価格40円/kgを達成する。
(2) 5年後(2022年度)は、エコフィード発酵TMRの製造と供給のためのビジネスモデルを構築する。
(3) 最終的には、ビジネスモデルを複数の業者の連携によるユニットとして全国展開を行い、酪農家の経営基盤を安定にし、林業に新たな雇用を創出し、国民に安全で安価な牛乳を安定供給する。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 最終的にエコフィード発酵TMRを製造・供給するユニットが全国展開した場合には、年間688億円の経済効果と林業に5,600人の雇用の創出が期待できる。
(2) 未利用木質資源に需要が生まれ、林業が持続可能な産業になり、森林が整備され、森林が持つ国民生活にとって重要な機能が維持され、自然と共存した環境調和型の持続可能な社会が実現する。
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