ゲノム編集による家畜系統造成の加速化
- 課題番号
- 27010A
- 研究グループ
- 農研機構生物機能利用研究部門・畜産研究部門
岡山大学大学院環境生命科学研究科 - 研究総括者
- 農研機構 細江 実佐
- 研究タイプ
- 一般型 Bタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- ゲノム編集による家畜系統造成の加速化(PDF : 1045.6KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
ゲノム解析より得られた有用形質に関する情報と優秀な遺伝形質を有効に活用するため、ゲノム編集技術による疾患原因遺伝子の修復やSNPs改変等を積極的に取り入れた、新たな家畜育種繁殖技術を確立することを目的とする。ウシのIARS異常症(一塩基変異が原因でタンパク合成不全となり、子牛が虚弱化する)をモデルとし、CRISPR/Cas9やpiggyBacシステム等のゲノム編集技術を利用して、外来DNA配列の挿入や内在配列の欠失などの痕跡を残すことなく、標的配列を正確に修復した個体の作成法を確立する。
2 研究の主要な成果
(1) IARS遺伝子の変異部位を特異的に認識・切断するCRISPR/Cas9を設計した。
(2) 外来DNA配列の挿入や内在配列の欠失などの痕跡を残すことなく、IARS異常症の疾患原因遺伝子を正確に修復した胎子を得た。
(3) 伸長胚移植とHybProbe法による遺伝子型判定によって、修復が起きた胚を効率的に選別・再移植する系を構築した。
公表した主な特許・論文
(1) Ikeda, M. et al. Correction of a Disease Mutation using CRISPR/Cas9-assisted Genome Editing in Japanese Black Cattle. Scientific Reports 7, Article number 17827 (2017).
3 今後の展開方向
(1) 受精卵におけるゲノム編集技術を確立し、ゲノム改変個体を作出する系を構築する。
(2) ゲノム情報に基づき、経済形質や抗病性に関わるSNPを実際に改変した個体を作出する。
【今後の開発目標】
(1) 2年後(2019年度)は、受精卵における効率的なゲノム編集技術を確立する。
(2) 5年後(2022年度)は、SNP改変個体を作出し、ゲノム情報と形質の相関を調べる。
(3) 最終的には、ゲノム情報を効率的に家畜造成に導入する新たな育種技術を確立する。
4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 遺伝性疾患や不良形質の抑制により年間数十億円とされる子牛の損耗や投薬費用を低減し、畜産経営のコストを削減する。
(2) 有用形質を効率的に導入する家畜育種を実現し、消費者ニーズに応えた畜産物を迅速かつ安価に提供できるようになる。
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農研機構
生物機能利用研究部門
E-mail:nias-renkei[at]naro.affrc.go.jp
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