生体の光応答性と代謝プログラミングを活用した新規家畜生産システムの開発
- 課題番号
- 27011A
- 研究グループ
- 九州大学 大学院農学研究院
- 研究総括者
- 九州大学 安尾 しのぶ
- 研究タイプ
- 一般型 Bタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 生体の光応答性と代謝プログラミングを活用した新規家畜生産システムの開発(PDF : 1063.4KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
畜産物の生産性向上、生産現場における省力化、および付加価値の高い食肉生産のため、家畜が持つポテンシャルを最大限に引き出すという視点に基づき、動物の日長反応性と代謝プログラミングを活用した新規家畜生産システムの開発を目的とする。このために、日長反応性と代謝プログラミングを経時的に追跡できるバイオマーカーを血漿と骨格筋で同定すること、および哺乳期の日長により黒毛和種の産肉性や肉質を制御することを目指す。
2 研究の主要な成果
(1) 哺乳期において、春出生のウシを長日に、あるいは秋出生のウシを短日にすると、体重増加を促進できることが示唆された。
(2)長日区では筋繊維サイズが増大し、短日区では肉質関連成分(カルノシン、分岐鎖アミノ酸)含量が多かったことから(10ヵ月齢)、哺乳期の日長で肉量や肉質に関連する指標を調節できることが示された。
(3)血漿セロトニン濃度および骨格筋のStx16の発現が、日長反応性や骨格筋の有用成分含量を示すバイオマーカーとなることが示唆された。
公表した主な特許・論文
(1) Uchiwa, T. et al. Exposure of C57BL/6J mice to long photoperiod during early life stages increases body weight and alters plasma metabolomics profiles in adulthood. Physiol. Rep. 4, e12974 (2016).
(2) Takai, Y. et al. Early-life photoperiod influences depression-like behavior, prepulse inhibition of the acoustic startle resonse, and hippocampal astrogenesis in mice. Neuroscience, in press
3 今後の展開方向
(1) 哺乳期に日長処理を行ったウシについて、出荷時の月齢における体重や枝肉量、肉質を調査し、哺乳期の日長が食肉に及ぼす影響を明らかにする。
(2) 生産現場における日長処理試験により、本研究の成果を現場レベルで検証する。
【今後の開発目標】
(1) 2年後(2019年度)は、出荷時の月齢における体重や枝肉量、肉質を調査する。
(2) 5年後(2022年度)は、生産現場における試験により、研究成果を検証する。
(3) 最終的には、産肉性と肉質の制御を両立できる日長処理法を確立する。
4 開発した技術シーズ・知見の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 日長処理で体重増加を促し、肥育牛や仔牛の早期出荷ができれば、約8億5000万円の効果が見込まれる。
(2) 光のコントロールという簡便かつ安全な方法により体重や肉質を制御できれば、生産者の利益向上や食肉の低価格化、付加価値の高い食肉生産が見込まれる。
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九州大学大学院農学研究院
代謝・行動制御学
TEL 092-642-4426
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