和牛の遺伝子多様体データベースの構築による子牛生産阻害因子の迅速な解明
- 課題番号
- 27008B
- 研究グループ
- 畜産技術協会、東京大学、北里大学、東京農業大学
岐阜県畜産研究所、兵庫県立農林水産技術総合センター
鳥取県畜産試験場、島根県畜産技術センター
鹿児島県肉用牛改良研究所、家畜改良事業団
家畜改良センター - 研究総括者
- 畜産技術協会 杉本 喜憲
- 研究タイプ
- 参学機関結集型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 和牛の遺伝子多様体データベースの構築による子牛生産阻害因子の迅速な解明(PDF : 1184.2KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
和牛の育種改良は、ゲノム育種価の利用によってスピードアップすることが期待されるが、一方で、新たな遺伝性疾患の発生が危惧される。そこで、和牛の要となる種雄牛500頭の遺伝子多様体データベースを構築し、授精記録、子牛損耗サンプルを活用して胚死滅と子牛損耗の有害な劣性変異を3つ同定することを達成目標とする。本事業によって、和牛の生産阻害因子をスピーディーに特定し安心して育種を行う仕組みが作られる。
2 研究の主要な成果
(1) 「和牛の遺伝子多様体データベースの構築」
和牛の要となる種雄牛517頭から高性能な多様体データベースの構築に成功した。
(多様体の内訳:35万SNP、2.3万indel、5.6千CNV)
(2) 「和牛ゲノム情報を活用した有害な劣性変異の探索」
13.3万件の授精記録(2.57万頭繁殖雌牛のDNA、血液サンプル)を収集。
903頭の子牛損耗サンプル(累計1147頭)を収集。
(3) 多様体データベースとバイオバンクを活用して、新規4つを含む7つの有害変異を特定した。
公表した主な特許・論文
(1) Arishima, T. et al. Maternal variant in the upstream of FOXP3 gene on the X chromosome is associated with recurrent infertility in Japanese Black cattle. BMC Genetics, 18, p103 (2017).
(2) Sasaki, S. et al. Loss of maternal ANNEXIN A10 via a 34-kb deleted-type copy number variation is associated with embryonic mortality in Japanese Black cattle. BMC Genomics, 17, p968 (2016).
3 今後の展開方向
(1) 特定した7つの有害変異の遺伝子検査を確立し、和牛集団から排除する(育種選抜、交配)。
(2) 多様体データベースとバイオバンクを補強・活用して、新規6個の候補有害変異を特定する。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年)は、和牛の遺伝子多様体データベースの管理、候補有害変異の検証体制を整える。
(2) 5年後(2022年)は、未解決の生産阻害因子6つを特定し、和牛集団から排除する。
(3) 最終的に和牛の遺伝子多様体データベースの管理、候補有害変異の検証体制を整え、生産阻害因子を迅速に特定し、和牛集団から排除する。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 新規4つの有害変異の和牛集団からの排除によって、4.16億から39億円/年の損失が回避される。
(2) DNA診断によって有害変異を確実に排除できることから、農家は「安心」して子牛の生産に集中できストレス軽減につながる。加えて、子牛生産のコストが下がり、牛肉の低価格化・農家の収入増加が期待される。また、健康な子牛を生産できるため動物福祉(Animal Welfare)に貢献でき、和牛の高級イメージだけでなく安心・安全・健康な和牛肉を供給することに役立ち、国際競争力が増す。
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