豚肉の食味に対する科学的評価法に関する研究
- 課題番号
- 27005B
- 研究グループ
- 近畿大学、(独)家畜改良センター、和歌山県畜産試験場
(株)相馬光学、農研機構畜産研究部門 - 研究総括者
- 近畿大学生物理工学部
白木琢磨(平成29年度)
入江正和(平成27~28年度) - 研究タイプ
- 産学機関結集型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 豚肉の食味に対する科学的評価法に関する研究(PDF : 1021.0KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
消費者がどのような豚肉をおいしいと感じるのか、また食味の良さに結びつく科学的評価値とは何なのかを明らかにし、家畜生産現場や流通現場で実践できる評価技術を開発する。そのため、本研究では、肉質の異なる豚肉の作出及び分析型官能評価値と理化学測定値の関係を解析し、これらの豚肉の理化学特性と消費者嗜好の関係を解明するとともに、光学肉質評価技術と先端技術を応用し、消費者に、より選ばれる高品質で食味の良い国産豚肉の客観的評価指標や評価法を提示する。
2 研究の主要な成果
(1) 食品製造副産物(もち菓子粉、ビスケット残さ、ソーメン、パスタ等)を飼料原料に利用して飼料コストを低減しつつ、アミノ酸バランス法注)により、肥育豚への給与飼料の組成に改良を加えた結果、良好な成長に加えて筋肉内脂肪含量が向上し、脂肪の質が良くなる等、食味の良い豚肉を生産することができた。
(2) 理化学特性値の一つである粗脂肪含量と、分析型官能評価で得たやわらかさ及び多汁性との間には有意な相関があり、筋肉内脂肪含量が増すと食味が良い(やわらかさと多汁性が増す)結果となった。また、消費者型官能評価でも筋肉内脂肪含量の高い豚肉がもっとも好まれた。脂肪質も食味に影響した。
(3) 近赤外光ファイバ法により、豚肉の食味に重要な筋肉内脂肪量や脂肪の質を非破壊で迅速かつ精度良く予測できることを明らかにした。また、小型軽量で光ファイバーを内蔵し波長範囲の広い新装置を試作した。
注)アミノ酸バランス法:研究レベルで行われてきた飼料中リジン含量を要求量未満とする従来のリジン欠乏法に対し、リジンを要求量程度に設定し、他のアミノ酸(蛋白質)含量を高めてリジンの比率を下げることにより、成長を低下させずに筋肉内脂肪含量を高める方法。その特徴は次ページを参照。
3 今後の展開方向
(1) 近赤外光ファイバ法による評価値は、流通における食肉の品質評価値だけでなく、牛肉での実例のように消費者へのPR手段や生産者への品質向上基準としても活用できる。
(2) アミノ酸バランス法は関西中心に普及指導を進めており、既に府県で実際に活用され、食味のすぐれたブランド豚肉が生産されている。今後は講習会や商業誌を通じ、積極的に技術普及に努める。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年)までに、アミノ酸バランス法を改良し、より効率的な脂肪質向上技術を開発する。
(2) 5年後(2022年)までに、近赤外光ファイバの新型装置のソフトウエア等を開発して実用化を促す。
(3) 最終的に、アミノ酸バランス法が普及すると現在の霜降り豚肉の生産量は拡大し、消費者に食味の良い豚肉供給ができる。また、近赤外光ファイバ法の活用については、牛肉と兼用の装置を開発することにより、流通でのさらなる活用が見込まれる。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 現在、我々が技術指導し、ブランド化されている豚肉は平均で2割高い枝肉価格で取引され、中央市場の競り値を通じて、一般豚肉の取引価格にも影響しており、経済効果は大きい。さらに、地域の観光産業などにも貢献しており、輸出も含め幅広い経済効果が期待される。
(2) 改良した飼養技術(アミノ酸バランス法)や小型軽量な新型装置(近赤外光ファイバ法)の普及により、脂肪交雑と脂肪質に特徴があり、食味が向上したブランド豚肉が生産できる。赤身の輸入豚肉との差別化が可能となることで、養豚農家の利益が増え、霜降り豚肉は消費者にも喜ばれる。
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