被覆茶需要に応える簡易な樹体診断法と効率的被覆作業による高品位安定生産体系の確立
- 課題番号
- 27015C
- 研究グループ
- 農研機構果樹茶業研究部門、静岡大学、静岡県農林技術研究所、京都府農林水産技術センター、三重県農業研究所、ハイナン農業協同組合、京都府農業改良普及センター、三重県中央農業改良普及センター
- 研究総括者
- 農研機構果樹茶業研究部門 堀江秀樹
- 研究タイプ
- 現場ニーズ対応型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- 被覆茶需要に応える簡易な樹体診断法と効率的被覆作業による高品位安定生産体系の確立(PDF : 1034.9KB)
1 研究の目的・終了時達成目標
被覆茶の需要が増しており、過度の被覆による樹体の生産能低下が懸念される。また、被覆作業自体が非常に手間がかかる。本事業では、被覆栽培を継続できるか否かを判定するための茶樹の樹体診断法を開発し、診断技術について現地実証するとともに、被覆アタッチメント等の活用による被覆作業の効率化に資する作業体系を確立することを目的とする。さらに得られた技術の導入に関する経営的評価も実施し、成果は「被覆茶安定生産マニュアル」として全国の茶産地への普及を目指す。
2 研究の主要な成果
(1) 茶樹の枝中のデンプン含量に基づく樹体診断法について、試料の採取から分析、数値の評価に至るまで手法が確立できた。近赤外法の導入により、分析作業を大幅に迅速化できる。
(2) 茶樹の樹冠面温度に基づく樹体評価法が確立できた。サーモグラフィーで得られた温度と計算によって導かれる温度との差を指標とする。(1)の評価結果等も併せて総合判断し、被覆の可否を判定する。
(3) 被覆作業の効率化については、被覆アタッチメントをロープ固定式資材と組み合わせることによって、作業時間の大幅な短縮が可能になることを明らかにし、さらに使用上の留意点についてマニュアルにまとめた。
(4) 目的とする茶種に応じた適切な被覆がなされているか、SPAD値及びEGC含量により評価可能とした。
公表した主な特許・品種・論文
(1) 松永明子他. 直がけ被覆における遮光率の違いが一番茶新芽内化学成分に及ぼす影響. 茶業研究報告 122, 1-7 (2016).
(2) 松尾喜義他.茶樹の被覆応答に関する最小被覆処理サイズに関する予備調査. 東海作物研究 146, 1-3 (2016).
(3)Sonobe, R et al. Estimating leaf carotenoid contents of shade-grown tea using hyperspectral indices and PROSPECT-D inversion. International Journal of Remote Sensing 39, 1-15 (2017).
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1)得られた成果をマニュアルとして公表することにより、全国の農業指導者及び生産者に情報提供する。
(2)本事業参画府県においては、普及組織と連携して技術普及に努める。現場で得られた声をフィードバックし、マニュアルの改訂等を行う。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年度)は、参画した3府県以外の地域の意見も取り入れマニュアルを改定する。
(2) 5年後(2022年度)は、ドローン等を用いて樹体を面的に評価する手法を開発する。
(3) 最終的には、生産地の地域単位で茶園の樹体評価する技術を開発し、製茶工場と連携したシステムを構築する。
4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 開発した技術を国内の1割の茶園で導入することにより、約50億円の経済効果が見込まれる。生産された抹茶、粉末茶を利用した製品の生産・流通拡大により、さらなる経済効果が期待できる。
(2) 本研究成果は、食品産業側の求める品質の茶の安定供給につながり、緑茶いりの菓子等のバラエティーがさらに豊かになる。いっぽうで、高品質の抹茶やかぶせ茶の安定供給により、国民が気軽に多様な緑茶を楽しめるようになる。
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農研機構金谷茶業研究拠点
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