バイオマス増大に向けたイネ次世代育種法の実証とマルチゲノム選抜への展開
- 課題番号
- 27007B
- 研究グループ
- 農研機構次世代作物開発研究センター、
農研機構中央農業研究センター北陸研究拠点 - 研究総括者
- 農研機構次世代作物開発研究センター 加藤 浩
- 研究タイプ
- 産学機関結集型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- バイオマス増大に向けたイネ次世代育種法の実証とマルチゲノム選抜への展開(PDF : 982.3KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
水田農業の活性化を図るため、ホールクロップサイレージ(WCS)および飼料米利用に適した飼料向け水稲の多収品種の育成が求められている。そこで、複数地域における高バイオマス収量を目指したゲノム選抜手法の検証と有望系統の育成、もみ収量におけるゲノム選抜の可能性を検討する。また、複数品種に由来するゲノム領域を融合して収量を高めるマルチゲノム選抜手法の開発を目標とする。
2 研究の主要な成果
(1)「たちすがた」と「北陸193号」の交雑後代からゲノム選抜された系統の乾物収量を評価した結果、関東地域および北陸地域の両方で、両親よりも地上部乾物収量が20%以上高くなる場合がみられ(平均15%)、イネのバイオマス向上に対するゲノム選抜の有効性を国内外で初めて検証した。
(2)複数の交雑集団を用いて、もみ収量に関するQTL解析を3年間行い、もみ収量に関するQTLを合計13個同定し、そのうち異なる2カ所(第1および第2染色体にそれぞれ座乗)の効果を検証した。
(3)国内で多収を示す8品種に由来するマルチゲノム集団を確立し、ハプロタイプ情報の利用により高精度な表現型予測が可能となる手法を開発した。
公表した主な特許・論文
(1) Matsubara et al. Improvement of rice biomass yield through QTL-based selection. PLoS One 11(3),e0151830 (2016)
(2) Ogawa et al. Haplotype-based allele mining in the Japan-MAGIC rice population. Sci. Rep. 8(1):4379 (2018)
(3) Matsubara et al. Identification of QTL alleles that stably increase the biomass yield of rice in multiple environments.
PLoS One, Under review.
3 今後の展開方向
(1) 「たちすがた」と「北陸193号」の交雑後代からゲノム選抜された系統については、WCS用品種育成に向け、耐倒伏性などを付与し高バイオマス育種素材としての活用を図る。
(2) マルチゲノム集団を用いて、もみ収量に関係する遺伝的メカニズムを明らかにすると同時に、飼料用米品種育成に向けた高精度な予測手法による高もみ収量育種素材の開発を目指す。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年)は、もみ収量に関する遺伝的メカニズムを明らかにする(飼料用米向け)。
(2) 5年後(2022年)は、高バイオマス育種素材を用いたWCS用多収系統を開発する。
(3) 最終的に、現在のWCS用飼料稲の収量を20%以上増加させる技術と品種を開発する。また、もみ収量に優れた飼料米育種のための基礎情報として活用する。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 本技術によって地上部乾物収量が20%増大すると、現在のWCS生産量100万t(推定)に適用された場合、40億円の効果が期待できる(価格20円/kgと仮定)。
(2) 収量などの量的形質における新規予測手法の開発は、ムギやダイズなどの他作物の複雑形質を向上させるための育種にも有用であることから、他作物に対する間接的な改良効果が期待できる。
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農研機構次世代作物開発研究センター
米丸淳一
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