デュアル抵抗性蛋白質システムによる革新的作物保護技術の応用技術開発
- 課題番号
- 26005AB
- 研究グループ
- 岡山県農林水産総合センター 生物科学研究所
京都大学、理化学研究所 - 研究総括者
- 岡山県農林水産総合センター 生物科学研究所 鳴坂 義弘
- 研究タイプ
- 産学機関結集型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成27年~29年(3年間)
- PDF版
- デュアル抵抗性蛋白質システムによる革新的作物保護技術の応用技術開発(PDF : 1073.2KB)
1 研究の目的・終了時の達成目標
病害による作物生産量の損失は甚大であり、植物が本来備えている病気に対する抵抗力を活用した病害防除技術の開発が求められている。本研究グループが発見した “2つの異なる抵抗性蛋白質による病原体の認識機構(デュアル抵抗性蛋白質システム)”による病害抵抗性作物の分子育種技術の実用化と、シーズ創出ステージで解読した炭疽病菌のゲノム情報に基づく抵抗性遺伝子の改変により、作物の免疫力を高める技術や複数の病害に対する抵抗性が付与された作物の開発を目標とする。
2 研究の主要な成果
(1) 本研究グループが発見した“2つの異なる抵抗性蛋白質による病原体の認識機構”を用いた病害抵抗性作物の分子育種技術の構築に成功した。
(2) 病害抵抗性作物の育種に貢献するため、ゲノム解読された作物から抵抗性遺伝子を検索・抽出するプログラムの開発に成功した。
(3) 2つの異なる抵抗性遺伝子を導入したキュウリが、炭疽病に対して強い抵抗性を示した。
(4) 2つの異なる抵抗性遺伝子を活性化し、作物に病害抵抗性を付与する低分子化合物を発見した。本化合物を活用して新たな病害虫管理技術の開発が期待できる。
公表した主な特許・論文
(1) Narusaka, M. et al. Leucine zipper motif in RRS1 is crucial for the regulation of Arabidopsis dual resistance protein complex RPS4/RRS1. Scientific Reports 6, 18702 (2016).
(2) Gan, P. et al. Genome-wide comparative genome analyses of Colletotrichum species reveal specific gene family losses and gains during adaptation to specific infection lifestyles. Genome Biology and Evolution 8, 1467-1481 (2016).
(3) Ahmad, A. et al. Inappropriate expression of an NLP effector in Colletotrichum orbiculare impairs infection on Cucurbitaceae cultivars via plant recognition of the C-terminal region. Molecular Plant-Microbe Interactions 31, 101-111 (2018).
3 今後の展開方向
(1) 開発プログラムにより抵抗性遺伝子を検索・抽出し抵抗性遺伝子の集積をはかるとともに、抵抗性遺伝子の導入による病害抵抗性作物を創製し海外での活用を図る。
(2) 抵抗性遺伝子を資材により活性化する作物保護技術を開発し、薬剤の圃場実証試験を行う。
【今後の開発・普及目標】
(1) 2年後(2019年度)は、抵抗性遺伝子を活性化する薬剤の圃場実証試験を行う。
(2) 5年後(2022年度)は、抵抗性遺伝子を活性化する薬剤の農薬登録をめざす。
(3) 最終的には、植物が本来備えている病気に対する抵抗力を活用した病害防除技術(抵抗性作物の育種、病害防除剤)により、化学合成農薬の使用量の2割削減をめざす。
4 開発した技術・成果の実用化により見込まれる波及効果及び国民生活への貢献
(1) 最終的には、植物が本来備えている病気に対する抵抗力を活用した病害防除技術(抵抗性作物の育種、病害防除剤)の普及により農業的損失が5%以上減ずることで、640億円の経済効果が見込める。
(2) 減農薬栽培した農作物を国民に提供することを可能とする。さらに、高付加価値な農産物として輸出促進への貢献が期待できる。
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岡山県農林水産総合センター
生物科学研究所 鳴坂義弘
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