堆肥中クロピラリドの高感度分析法の開発
- 課題番号
- 28045C
- 研究グループ
- 農研機構農業環境変動研究センター
- 研究総括者
- 農研機構農業環境変動研究センター
清家 伸康 - 研究タイプ
- 重要施策対応型
- 研究期間
- 平成28年(1年間)
- PDF版
- 堆肥中クロピラリドの高感度分析法の開発(PDF : 1318.3KB)
1 研究の背景・目的・成果
除草剤成分クロピラリドが残留した家畜排せつ物由来の堆肥等を利用する際に,堆肥等に残留するクロピラリドにより農作物に生育障害が発生するケースが報告されている。生育障害の発生は作物によって様々であり,不明な点が多いが,この一因として,クロピラリドに感受性の高い作物は,クロピラリドが極微量であっても生育への影響を受けやすいことが考えられる。本研究では,極微量のクロピラリドによる生育への影響を明らかにすることを目的として,ミニトマト「アイコ」については,供試した品種で感受性が最も高く,土壌中クロピラリド濃度が1 μg/kg(乾土あたり)1)で初期生育に影響が生じ,同25 μg/kg では明らかな生育障害が発生することを確認した。また,高感度なクロピラリド分析を可能とするため,今までの堆肥中クロピラリドの定量下限値(10 μg/kg)を一桁下回る分析法を開発した。
1) 堆肥3tを10aに施用し、15cmの深さで耕うんする場合、堆肥中のクロピラリド濃度約50 μg/kgに相当
2 研究の内容・主要な成果
(1) 土壌中クロピラリド濃度0~100 μg/kg(乾土あたり)の範囲でサヤエンドウ,ミニトマト,トマト,台木用トマト,スイートピー(2品種)を28日間栽培した結果,最も感受性の高かったミニトマト「アイコ」では,土壌中クロピラリド濃度1 μg/kgで初期生育に影響が生じ,同25 μg/kgでは明らかな生育障害が発生することを確認した。これにより,ミニトマト「アイコ」は,生物検定法において,最も高い感度で堆肥施用による初期生育への影響の有無を確認することができる作物であることが判明した。
(2) 従来法の工程を改良することにより堆肥中クロピラリドのLC-MS/MSによる高感度な分析法を開発した。
これにより,従来10 μg/kgであった定量下限値を2 μg/kgまで下げることが可能となり,生物検定法よりも高感度で堆肥中クロピラリドを検出することができる。
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び取り組み状況
(1) 今回の調査で最も感受性の高かったミニトマト「アイコ」における初期生育への影響については,「飼料及び堆肥に残留する除草剤の簡易判定法と被害軽減対策マニュアル」に反映させ公開する。
(2) 堆肥中クロピラリド分析法については,速やかに論文化を行い,他の分析・研究機関とのクロスチェック及びバリデーションによる妥当性の検証を経た後に,「肥料等試験法」への掲載を目指す。
【普及目標】
(1) 2017年は,得られた研究成果(生育への影響等)を「飼料及び堆肥に残留する除草剤の簡易判定法と被害軽減対策マニュアル」へ反映。
(2) 2018年は,得られた研究成果(堆肥中クロピラリド分析法)を「飼料及び堆肥に残留する除草剤の簡易判定法と被害軽減対策マニュアル」へ反映。2~3年後には,同マニュアルを改訂するとともに,分析法を「肥料等試験法」に掲載。
(3) (1)や(2)を通じたクロピラリドによる生育障害の発生の回避。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
堆肥中クロピラリドの高感度分析法を開発したことにより,クロピラリドによる農作物の被害発生を抑えて生産性を向上。
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