リンゴ黒星病の発生被害軽減をめざした多発要因の解明と発生予察システムの開発
- 課題番号
- 28043C
- 研究グループ
- 農研機構(果樹茶業研究部門、農業技術革新工学研究センター)、
青森県産業技術センターりんご研究所、長野県果樹試験場 - 研究総括者
- 農研機構(果樹茶業研究部門) 伊藤 伝
- 研究タイプ
- 重要施策対応型
- 研究期間
- 平成28年(1年間)
- PDF版
- リンゴ黒星病の発生被害軽減をめざした多発要因の解明と発生予察システムの開発(PDF : 1520.3KB)
1 研究の背景・目的・成果
近年、我が国のリンゴ主産地(青森県、長野県他)ではリンゴ黒星病が多発傾向にあり、青森県内では地域的に被害果率が80%近い園地もある。このため、来年度以降の発生被害軽減に向けた防除対策の構築が求められている。そこで、黒星病の多発生要因を解析するとともに、これまでの発生予察調査を補完する新たな発生予察システムの開発、越冬伝染源の減少を目的とした秋季の防除技術の開発、黒星病の基幹防除剤であるDMI剤に対する耐性菌の遺伝子診断法の開発を行った。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 青森県における平成28年の黒星病多発の主要因は、本病の基幹防除剤であるDMI剤に対する感受性が低下した黒星病菌が津軽地方の広域に発生したことであることを明らかにした。
(2) 長野県における 平成28年の多発は、展葉初期の感染と薬剤防除のタイミングに起因し、早期の感染が2年以上続いた場合に顕著に多発する傾向が認められ、この時期の防除対応が本病の発生量に強く影響することを明らかにした。
(3) 秋季防除技術としては、9月15日頃にすす斑病・すす点病対策の特別散布として、黒星病に有効な薬剤を散布した場合に、効果はやや低いものの有効であることを明らかにした。
(4) リンゴ黒星病発生予察システムとしては、従来利用してきたMETOS-Dと同等に、既開発のナシナビ(ナシ病害防除ナビゲーション)を利用できることを確認した。
(5) リンゴ黒星病菌ゲノムの特定遺伝子上にDMI剤感受性低下に関わる可能性が高い塩基変異を見出し(従来は不明)、この変異を特異的に検出できる遺伝子診断法を開発した。
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び取り組み状況
(1) 青森県においては、津軽広域でのDMI剤感受性低下黒星病菌の発生を受けて、平成29年りんご病害虫防除暦からDMI剤の使用を削除する等の大きな黒星病防除体系の変更を行った。
【普及目標】
(1) 2017年は、青森県においては生産者や指導員を対象に講習会・研修会を開催し、DMI剤を使用しない黒星病防除体系への理解を求めるとともに、生産者へ広く普及させる(県内農家1万5000戸対象)。長野県においても指導会・研修会を開催して、本事業で明らかにした多発生要因を周知させる。
(2) 2018年は、青森県においては新たに得られたデータを黒星病防除体系に反映させるとともに、黒星病発生予察システムの現地実証試験を行う。長野県においても早期多発生に対応できる防除体系の現地実証を行う。
(3) 3~5年後には、青森県においてはさらに改良した黒星病防除体系について同様に対応するとともに、黒星病発生予察システムを稼働させる。長野県においても早期多発に対応できる防除体系を定着させる。
(4) 将来的には、リンゴ黒星病を安定的に防除できる防除体系を構築・定着させて、高品質なリンゴの安定生産・安定供給を実現する。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
リンゴは国内ではカンキツ類に次ぐ生産量があり、早生~晩生まで多くの品種が育成されて、バラエティに富んだ果実の色合い、食味、歯ざわり、風味等を楽しめる果物となっている。黒星病被害が軽減され、消費者ニーズに応答できる種々のリンゴの安定生産・安定供給が可能となれば、日本国民の豊かな食生活につながる。
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