クロバネキノコバエ科の一種の生態の解明及び防除手法の開発
- 課題番号
- 28040C
- 研究グループ
- 農研機構野菜花き研究部門、中央農業研究センター、
農業環境変動研究センター、静岡大学、埼玉県農業技術研究センター、埼玉県大里農林振興センター - 研究総括者
- 農研機構野菜花き研究部門 太田 泉
- 研究タイプ
- 重要施策対応型
- 研究期間
- 平成28年(1年間)
- PDF版
- クロバネキノコバエ科の一種の生態の解明及び防除手法の開発(PDF : 1257.7KB)
1 研究の背景・目的・成果
平成26年頃より埼玉県北部のネギやニンジン産地で、クロバネキノコバエ科の一種Bradysia sp.による食害が急増し、被害の激しい圃場では出荷不能になるなど大きな問題となっている。本種は国内未記録の害虫であり、種、生態、防除法等が不明であるため、本研究では、1.クロバネキノコバエ科の一種 Bradysia sp.の生態的特性の解明、2.在来種との種識別法の開発、3.防除技術の開発、などの課題を実施して、被害発生地域で本種を防除するための技術開発を行う。
2 研究の内容・主要な成果
(1) クロバネキノコバエ科の一種Bradysia sp.の継代飼育法を開発した。異なる温度におけるBradysia sp.の発育期間、産卵数を明らかにした。
(2) ネギ、ニンジンにおけるBradysia sp.幼虫の寄生を確認する方法を開発した。
(3) Bradysia sp.はネギほ場に継続的に生息し、秋以降に増加することを明らかにした。 また、Bradysia sp.幼虫は、土寄せ前のネギでは茎盤附近を多く加害するが、土寄せ後はその上部の葉鞘にも移動して加害することを確認した。
(4) Bradysia sp.の発生地域では、本種幼虫がニラも食害することを確認した。
(5) Bradysia sp.のDNA塩基配列は、在来クロバネキノコバエ類3種と異なること、在来種のチバクロバネキノコバエB. impatiensとの間に形態的相違点が存在することを明らかにした。
(6) ネギに登録のある殺虫剤6種について、Bradysia sp.に対する殺虫効果を確認した。また、防虫ネットによるBradysia sp.成虫の侵入抑制効果や石灰窒素施用によるネギ収穫後残渣の分解促進効果を確認した。
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び取り組み状況
(1) Bradysia sp.に対して殺虫効果が認められた薬剤6種のうちニテンピラム水和剤の農薬登録が認可されて、 Bradysia sp.の発生地域で利用可能となった。
(2) Bradysia sp.の発生生態やネギに対する加害様式がある程度解明されたことで、 Bradysia sp.の発生地域では、加害されたネギを適切に廃棄処分する取り組みが行われるようになった。
【普及目標】
(1) 2017年は、Bradysia sp.への農薬登録が認可された殺虫剤を使用して、被害発生地域のネギ圃場で薬剤防除効果を実証する。
(2) 3~5年後には、Bradysia sp.の発生地域全体で複数の殺虫剤で薬剤防除を実施する。
(3) 将来的には、薬剤とその他の方法を組み合わせたBradysia sp.の防除技術を確立する。
(4) 本研究の成果を用いて防除マニュアル(防除の手引き)を作成し、関係者へ周知する
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
Bradysia sp.の防除技術が確立することにより、発生地域におけるネギ、ニンジン生産農家の経営安定と首都圏への安定供給に大きく貢献できる。また、今後、他地域でBradysia sp.が発生した場合には、本事業で得られた成果によって迅速に害虫種が特定できるため、国内の植物防疫にも貢献できる。

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