被災地域の営農再開に向けた熊本地震による農地・作物生育への影響に関する調査研究
- 課題番号
- 28039C
- 研究グループ
- 農研機構九州沖縄農業研究センター、熊本県農業研究センター、
農研機構農業環境変動研究センター、農研機構農村工学研究部門 - 研究総括者
- 農研機構九州沖縄農業研究センター 岡本 正弘
- 研究タイプ
- 重要施策対応型
- 研究期間
- 平成28年(1年間)
- PDF版
- 被災地域の営農再開に向けた熊本地震による農地・作物生育への影響に関する調査研究(PDF : 1441.7KB)
1 研究の背景・目的・成果
平成28年4月に発生した熊本地震により、熊本県では圃場の亀裂や液状化、地下水の塩水化、果樹園の法面崩壊などの多大な被害が生じた。このため本課題では、熊本県の速やかな営農再開に向けて、農地の被災状況を最新の技術を用いて明らかにし、水稲や果樹・野菜等への影響や代替作物である大豆・飼料作物類の生育特性を把握した。
2 研究の内容・主要な成果
(1) ドローンにより、被災農地の不陸(圃場の凹凸)状況を迅速かつ安価に推定する手法を開発した。精度は、従来の航空機レーザー測量と有意差はなく、1km2当たり約85万円(航空機レーザー測量の約30%)のコストで、1週間程度で推定できる。
(2) 不陸により生じた圃場の凹部では、代替作物である大豆に湿害が発生し、葉色が低下し、整子実量が半減した。水稲の生育および収量は、圃場の凹部(水域部)の収量が凸部より優った。スクミリンゴガイの被害が多い水田では凹部の生育・収量が劣る傾向を示した。
(3) 飼料作物は播種時期、草種が多様なことから、適切な草種を選択することにより代替作物として阿蘇谷の様々な作付け条件に対応できることを明らかにした。
(4) 根が露出したウンシュウミカンでは果実肥大が抑制され糖度が高くなる傾向があった。施設栽培のトマトでは液状化の影響は必ずしも一様ではなかったが、生育に大きな違いは確認されなかった。
【公表した主な特許・品種・論文】
(1) 丸山篤志他.熊本地震により亀裂や不陸が生じた水田圃場の減水特性.日本農業気象学会2017全国大会
(2) 北川まき他.土壌水分条件が異なる圃場での飼料作物の収量の比較.2017年度日本草地学会弘前大会
(3) 野見山綾介他.熊本地震の被災農地で栽培された大豆および水稲の生育調査.日本農業気象学会2017年全国大会
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び取り組み状況
(1) 熊本地震が、農地(地表および地下部、土壌、地下水)や水稲、果樹・野菜(トマト、カキ、ウンシュウミカン等)、代替作物(大豆、飼料作物)の生育へ与えた影響を明らかにした。
【普及目標】
(1) 農地・作物生育への影響に関する調査結果をとりまとめ、2017年までに、熊本県の生産者や関係機関に受け渡す。
(2) 2017年~2018年は、シンポジウム等を通し、調査結果を周知。
(3) 2017年~2018年は、ドローンによる不陸の推定手法をマニュアル化。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
熊本地震が農地や水稲、園芸作物、代替作物(大豆、飼料作物)の生育へ与えた影響が明らかにされ、熊本農業の創造的復興に貢献する。ドローンによる不陸の推定手法は、従来の航空機レーザー測量に比べ安価かつ迅速に適用できることから、今後、地震による農地の被災状況を迅速かつ効率的に把握する上での基本技術となる。
この研究成果を活用しませんか?
この研究に関するご相談や質問等は、以下よりお問い合わせいただけます。
農研機構
岡本正弘
TEL096-242-7515
同じ分野の研究成果
お問合せ先
農林水産技術会議事務局研究推進課産学連携室
担当者:産学連携振興班
ダイヤルイン:03-3502-5530
FAX番号:03-3593-2209