地域振興に資する薬草栽培事業の技術開発
- 課題番号
- 26080C
- 研究グループ
- 金沢大学、医療法人社団ヤベツ会、
東京農業大学 - 研究総括者
- 金沢大学 佐々木陽平
- 研究タイプ
- 現場ニーズ対応型 Bタイプ
- 研究期間
- 平成26年~28年(3年間)
- PDF版
- 地域振興に資する薬草栽培事業の技術開発(PDF : 1510.4KB)
1 研究の背景・目的・成果
薬用作物・生薬の8割以上を中国に依存し、日本では国産生薬の生産が1割強程度というのが現状である。
近年、中国産生薬の高騰、農薬汚染問題等から国産生薬の生産拡大が急務である。これを解決するため、国内での薬用作物の栽培マニュアルの作成、中国産との識別法開発、非薬用部を使用した商品開発を行うとともに、これらの成果を基幹とした地域振興活動を実践した。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 薬用作物4種類(トウキ、ジオウ、シャクヤク、センキュウ)について栽培マニュアルを作成した。この4種類は漢方薬「四物湯(しもつとう)」の原料であり、他の漢方処方にも使用されている。薬用作物は、収穫したのち、加工工程を経るため、トウキとジオウはさらに加工マニュアルも作成した。
(2) 薬用作物4種類に対し、それぞれ中国産との識別のために、DNA 鑑別法を明らかにした。これは輸入品との識別に有効な技術であるとともに医薬品の規格基準書である日本薬局方に適した種であることも示した。
(3) 非薬用部であることからこれまで廃棄されていた地上部を利用して入浴剤「しもつのゆ」、薬草せっけんをそれぞれ商品化した。これらの販売による副収入が期待できる。
(4) 石川県白山市神子清水町の耕作放棄地にて薬草栽培を開始した。試験栽培を経て活動を拡大した結果、金沢大学と白山市の包括連携協定に結びつく活動になった。
【公表した主な特許・品種・論文】
上野 睦美、佐々木 陽平:ミヤマトウキの薬用資源としての調査研究、日本植物園協会誌、50、23-28 (2015)。
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び取り組み状況
(1) 薬用作物4品目の栽培マニュアル、2品目の加工マニュアルについて、金沢大学・附属薬用植物園のウェブサイト (http://www.p.kanazawa-u.ac.jp/~yakusou/)で公開予定。
(2) 中国産との識別、日本薬局方の規定を満たす確認法としての DNA鑑別法も同ウェブサイトで公開。
(3) 非薬用部を利用した入浴剤「しもつのゆ」をせっけん工房エステルで商品化し販売を開始している。
(4) 石川県白山市で薬草栽培を核とした地域活動で 20 a の栽培が始まり、次年度更に拡大する予定。
【普及目標】
(1) 2017年は、4種類のマニュアルを白山市に配布(50部)。
(2) 2018年は、石川県内での普及を目指し各地に配布する(100部)とともに電子ファイルも広く配信。
(3) 3~5年後には石川県に生産組合を2~5団体設立することを目標にする。
(4) 将来的には、当帰 5 ha(20,000株)を目標にする:日本の生産量の約 4%を目指す。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
薬用作物栽培マニュアル、DNA鑑別による種の識別、そして非薬用部位を活用した商品開発を達成したことで白山市の一地域の振興に貢献した。栽培マニュアルが普及し、日本各地にこの活動が広がることで耕作放棄地の活用や生薬の国内生産の増加が期待され、将来的には国民の健康にも貢献する。
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