変動気象に対応可能な水稲高温障害早期警戒・栽培支援システムの開発
- 課題番号
- 26072C
- 研究グループ
- 公立大学法人岩手県立大学、農研機構東北農業研究センター、農研機構西日本農業研究センター、農研機構九州沖縄農業研究センター、農研機構農業環境変動研究センター、新潟県農業総合研究所
- 研究総括者
- 農研機構農業環境変動研究センター 大野 宏之
- 研究タイプ
- 現場ニーズ対応型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成26年~28年(3年間)
- PDF版
- 変動気象に対応可能な水稲高温障害早期警戒・栽培支援システムの開発(PDF : 1344.1KB)
1 研究の背景・目的・成果
近年の温暖化傾向を背景に、水稲の登熟期間が高温となる頻度が高まり、白未熟粒や胴割れ粒などの高温登熟障害が深刻化し、広い地域で問題となっている。そこで、予測した登熟期の気温推移に応じて肥培管理を変更することで白未熟粒や胴割れ粒などの発生を低減するこれまでにない技術を実用化することを目的に、気象予測を含む気象データや警戒情報を全国について作成する技術、これを活用する新しい水稲栽培法、及びウェブを介してこれを提供する技術を結合して「水稲高温障害早期警戒・栽培支援システム」を開発した。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 農研機構メッシュ農業気象データを改良して予報期間を延長し、26日先までの予報を含む日別気温を全国について利用できるようにした。
(2) 穂揃期において葉色(SPAD)値が適切な値(水稲品種「ヒノヒカリ」については35)となっていれば、登熟前半が高温になっても基部未熟粒の発生が抑制でき食味の低下も抑えられることを明らかにした。さらに、穂揃期のSPAD値が適切な値となるように2回目の穂肥を調整する技術を開発した。
(3) 登熟初期の気温条件と出穂後積算気温、登熟後期の葉色(SPAD)値から「コシヒカリ」の胴割れ発生率を予測する手法を開発した。次に、精米時の砕米の発生と正常粒歩留りの低下を抑えるための目安となる胴割れ率を多数の精米実験から30%と明らかにした。これらを総合して、高温年においても胴割れによる品質の低下を抑える適期刈取り支援技術を開発した。
(4) 気象データや水稲に対する高温・低温警戒レベル指標を地図上のレイヤーやポップアップグラフとして表示できる早期警戒情報伝達システムを開発した。気象データの自由に処理を登録して表示させる機能のほか、被害軽減に向けた注意喚起や対策技術の情報交換の機能も有する。
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び取り組み状況
(1) 新潟県の約10の普及指導センターにおいて57名が本システムを使用した。
(2) 本研究の成果発表会を開催し、複数の県より導入の希望が寄せられた。
【普及目標】
(1) 2017年は、4県、200人程度の協力者による本システムの利用を目指す。同時に、対応品種の拡充とコンテンツ充実も進める。
(2) 2018年と2019年には、民間事業者と協力し、サービスの経済性を検証し損益分岐点を明らかにする。
(3) 2020年と2021年は、複数の民間事業者と協力し、それぞれの事業者が持つ営農ソリューションへの普及を進める。
(4) 将来的には、栽培管理支援コンテンツが、事業者の様々な営農ソリューションから生産農家に提供される。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
本研究で、気象予測データおよびウェブアプリケーションを組み合わせることで、生育中の作物の管理に気象予測を定量的に活用するという新しいコンセプトの生産技術が構築できることが実証された。今後、同じコンセプトの様々な生産技術が様々な作物に対して開発されて民間事業者等に普及し、ICTにより生産者に安価に提供されれば、変動気象下においても農作物生産の質と量が安定化し、国民生活に貢献する。
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