“いつでも天敵”~天敵増殖資材による施設園芸の総合的害虫防除体系の確立・実証~
- 課題番号
- 26070C
- 研究グループ
- 農研機構 中央農業研究センター、大協技研工業(株)、石原産業(株)中央研究所 、群馬県農業技術センター 、徳島県立農林水産総合技術支援センター 、鹿児島県農業開発総合センター 、福岡県農林業総合試験場 、高知県農業技術センター 、福岡県八女普及指導センター 、高知県安芸農業振興センター 、石原バイオサイエンス(株) 、(一社)全国農業改良普及支援協会
- 研究総括者
- 農研機構 中央農業研究センター 下田 武志
- 研究タイプ
- 現場ニーズ対応型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成26年~28年(3年間)
- PDF版
- “いつでも天敵”~天敵増殖資材による施設園芸の総合的害虫防除体系の確立・実証~(PDF : 1384.5KB)
1 研究の背景・目的・成果
ハダニ類・アザミウマ類・コナジラミ類は薬剤防除が困難な微小害虫で、施設園芸作物での被害が問題化しているが、天敵利用による生物防除は十分進んでいない。そこで、これらの害虫の有力天敵であるミヤコカブリダニやスワルスキーカブリダニを対象に、より効果的な天敵放飼を行うための天敵増殖資材(バンカーシート)を開発する。施設栽培のキュウリ・ナス・イチゴ・サヤインゲン・花卉(ダリア)における利用技術を開発し、実証試験でその普及性を検証することで、バンカーシートを用いた総合的害虫防除体系を構築する。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 従来の天敵放飼資材(パック製剤やボトル製剤)よりも優れた性能(天敵放出性や不適環境に対する天敵保護効果)を持つバンカーシートを開発し、これを製品化した。
(2) バンカーシートの最適利用条件(例:育苗期からの天敵放飼)や併用可能な薬剤散布条件等を明らかにし、放飼効果をさらに高める補助技術(ガマ花粉処理や誘引ひもの利用等)を開発した。
(3) 薬剤防除に依存し天敵利用が進んでいない施設栽培の野菜(育苗期~定植後のキュウリ・ナス・イチゴ)、登録薬剤が少なく天敵利用も進んでいないサヤインゲン、薬剤散布回数が多い花卉(ダリア)において、バンカーシートを用いた総合的害虫防除体系を構築し、利用マニュアルを作成した。
(4) 本資材に導入するミヤコカブリダニ剤(施設栽培の野菜、花き等のハダニ類)と スワルスキーカブリダニ剤(施設栽培の野菜等のアザミウマ類、コナジラミ類)の農薬登録を取得した。
【バンカーシートを用いた天敵製品の上市】
2016年12月:ミヤコカブリダニ(ミヤコバンカー)、2017年2月:スワルスキーカブリダニ(スワルバンカー)
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び取り組み状況
(1) 石原産業と石原バイオサイエンスは、JA全農の全国組織を通じ、2017年春からバンカーシートを用いた天敵製品の販売を本格的に開始する。
(2) 施設園芸作物[キュウリ・ナス・サヤインゲン・イチゴ・花卉(ダリア)]におけるバンカーシートを利用した防除体系のマニュアルを作成中。本格的な販売開始後、生産者等に配付予定。
(3) 作成したマニュアルについては、次年度より農研機構のHP等で公開する予定。
【普及目標】
(1) 2017年は、バンカーシートを用いた天敵製品の販売と利用(100ha)を計画。作成中のマニュアルを公表。
(2) 2018年は、野菜を中心に300haで利用を計画。
(3) 3~5年後には、野菜を中心に1,000haで利用することが目標。
(4) 将来的には、野菜を中心にバンカーシートを介した天敵利用技術が広く普及する。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
(1)薬剤防除への依存度が高い野菜(栽培初期のキュウリ・ナス・イチゴ、登録農薬が少ないサヤインゲン)や花卉(ダリア)での天敵利用が大きく進むため、薬剤使用量の低減が可能となり、安心・安全な農作物の安定供給につながる。
(2)害虫防除のための薬剤散布作業の負担が軽減されるため、生産者は栽培・収穫作業に専念でき、農作物の品質・生産性の向上につながる。
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