薬用系機能性樹木の生産効率化手法の開発
- 課題番号
- 26063B
- 研究グループ
- 株式会社ツムラ生薬本部生薬研究所、 北海道立総合研究機構、鹿児島県森林技術総合センター
- 研究総括者
- 森林総合研究所 谷口 亨
- 研究タイプ
- 産学機関結集型 Bタイプ
- 研究期間
- 平成26年~28年(3年間)
- PDF版
- 薬用系機能性樹木の生産効率化手法の開発(PDF : 1388.2KB)
1 研究の背景・目的・成果
原料生薬の約8割は中国産であり、自給率は1割程度に過ぎないなど、医薬品原料となる薬用植物の国内調達は不安定な現状にあり、薬用植物の国内栽培による自給率の向上が求められている。
そこで、国内に自生し、生薬原料となる薬用樹木であるカギカズラとキハダ、奄美大島固有の絶滅危惧種であり、抗がん剤原料成分を含むワダツミノキを対象に優良個体の選抜、増殖、栽培による医薬品原材料の生産効率化のための手法の開発を行った。
2 研究の内容・主要な成果
(1) カギカズラの個体収集と保存を行い、 保存できた72個体の薬用成分含有率を評価し、69個体が生薬原料としてのアルカロイド含有率の日本薬局方基準(リンコフィリン及びヒルスチンが0.03%以上)を満たすことを明らかにした。
(2) 成長が早く、ベルベリン含有率が日本薬局方基準(1.2%以上)を満たすキハダ11個体及び抗がん剤原料成分(カンプトテシンとその類縁体)を高含有するワダツミノキ3個体を選抜した。
(3) カギカズラとワダツミノキの組織培養及びさし木による優良個体のクローン化のための技術を開発した。
キハダの組織培養によるクローン化に成功した。
(4) カギカズラとワダツミノキのクローン苗の栽培方法を開発して栽培初期の生育評価を行うとともに、クローン栽培では薬用成分含有率のバラツキが少なくなることを明らかにした。
【公表した主な特許・品種・論文】
(1) Ishii, K. et al. Micropropagation of Uncaria rhynchophylla – a medical woody plant. Acta Horticulturae. 1055, 353-356 (2014)
(2) 谷口亨他. 薬用系木本植物カギカズラの組織培養. 関東森林研究. 66, 99-100 (2015)
3 開発した成果の展開方向
(1) 薬用樹木の優良個体の選抜、育苗、栽培に関する本課題での一連の成果は、薬用樹木を国内で栽培するための基盤情報となる。
(2) 日本薬局方のみならず実需者ニーズを満たす系統の選抜、また、クローン苗作成や栽培技術についてマニュアル化し、成果の普及を行う必要がある。
【普及目標】
(1) 2017年にはカギカズラの植栽試験を開始し、3年後を目処に特性表を公表する。
(2) 3~5年後には、クローン苗を用いた実用栽培試験の開始を目指す。
(3) 将来的には、実需者ニーズを満たす多様な品種を提供し、カギカズラとキハダを基原とする生薬の国内栽培拡大に寄与する。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
中山間地域や耕作放棄地における薬用樹木の栽培による地域経済の活性化と、医薬品原材料の自給率の向上による国民生活の安全・安心に貢献できる。
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森林総合研究所森林バイオ研究センター
谷口亨
TEL 0294-33-7348
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