アンカー型イソマルトメガロ糖の生産技術確立とその分子特性に基づく食品素材の開発
- 課題番号
- 26062B
- 研究グループ
- 北海道大学、大阪府立大学、
農研機構食品研究部門、 日本食品化工株式会社 - 研究総括者
- 北海道大学大学院農学研究院 原 博
- 研究タイプ
- 産学機関結集型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成26年~28年(3年間)
- PDF版
- アンカー型イソマルトメガロ糖の生産技術確立とその分子特性に基づく食品素材の開発(PDF : 1369.4KB)
1 研究の背景・目的・成果
糖転移酵素による難消化性オリゴ糖の生産技術で、日本はこれまで世界をリードし多種のオリゴ糖が生産・実用化されてきた。しかしその差別化は難しく、全く異なる作用機序を持つ新規糖質が渇望されていた。アンカー型イソマルトメガロ糖は、フラボノイドなど難溶性食品成分を可溶化する、これまでにないユニークな作用を有する新規糖質である。本研究は、この新たな糖質を機能性食材として実用化することを目的としている。
乳酸菌の生成する糖転移酵素DDaseを用いて、実用化可能な生産プロセスを確立し、また難溶性物質の可溶化メカニズムの解明、食品素材としての安全性確認などの成果をあげた。
2 研究の内容・主要な成果
(1) これまで組み換え酵素で調製されていたアンカー型イソマルトメガロ糖を、天然酵素で生産可能にした。
(2) イソマルトメガロ糖を作る糖転移酵素の乳酸菌からの生産性を30倍に向上させ、実用化に目処を付けた。
(3) イソマルトメガロ糖によるフラボノイド可溶化機構を解明し、ナノ構造制御による食品設計を行った。
(4) 可溶化されるフラボノイドの構造特異性を解明し、フラボノイド吸収促進作用を生理的条件で確認した。
(5) 実用プロセスで生産されたイソマルト糖混合物に、メガロ糖単体より強い作用を見いだした。
(6) 消化管バリア増強作用や免疫調整作用を見いだし、また反復投与試験による安全性を確認した。
【公表した主な特許・品種・論文】
(1) 特願 2014-88832 腸管バリア機能亢進材、腸疾患治療および予防用医薬組成物 (日本食品加工株式会社、北海道大学)
(2) 特願 2015-071049 可溶化材 (北海道大学、大阪府立大学、農業・食品産業技術総合研究機構)
(3) 特願 2015-248676(PCT/JP2016/086678) ダブル及びシングルアンカー型イソマルトメガロ糖、その製造方法及びその利用 (北海道大学)
3 開発した成果の展開方向
(1) 開発した新規機能性糖質の生産コストを下げることによって市場の競争力を高めると同時に、そのユニークな機能性と、食材としての汎用性による新たな機能性糖質市場を切り開く。
(2) 難溶性で膜浸透性の高いフラボノイドなどのBCSクラス2成分は、様々な生理活性を有する。これを可溶化することによって、それらの潜在能力を引き出す機能は、食品による新たな生活習慣病や認知症の予防・治療手段を提供する技術である。
【開発目標】
(1) 2017年度は、大手最終製品メーカーと実用化に向けた共同研究準備体制を確立する。
(2) 2018年度は、成果の特許出願を行うとともに、実機生産体制を構築する。
(3) 2019年度は、ヒト試験によるフラボノイド吸収促進などのエビデンスを取得する。
(4) 5年以内に、アンカー型イソマルトメガロ糖を1,000T/年以上の生産を目指す。
(5) 5年以内にメガロ糖研究会を発足して、より広い分野におけるイソマルトメガロ糖の普及を促進する。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
新たな機能性糖質の投入により、食品産業を活性化させるとともに、イソマルトメガロ糖の普及により超高齢社会に突入する日本において深刻となる、心疾患やがん、認知症を予防する食材を提供することにより、「健康長寿」社会の達成に寄与する。
この研究成果を活用しませんか?
この研究に関するご相談や質問等は、以下よりお問い合わせいただけます。
北海道大学
原 博
TEL011-706-3352
同じ分野の研究成果
- 食品
- 機能性
- 新規魚油由来脂肪酸の事業化を見据えた基盤・実証研究
- 食品
- 発酵技術
- コエンザイムQ10高度生産酵母の開発
- 食品
- 食の安全性
- トランス脂肪酸問題の質的解決に向けたトランス脂肪酸異性体ごとの代謝性評価
お問合せ先
農林水産技術会議事務局研究推進課産学連携室
担当者:産学連携振興班
ダイヤルイン:03-3502-5530
FAX番号:03-3593-2209