地域特産作物をグループ化して農薬登録するための作物残留値予測手法の開発
- 課題番号
- 26061B
- 研究グループ
- 農研機構農業環境変動研究センター、大阪大学、
愛知県農業総合試験場、高知県農業技術センター - 研究総括者
- 農研機構農業環境変動研究センター 與語 靖洋
- 研究タイプ
- 産学機関結集型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成26年~28年(3年間)
- PDF版
- 地域特産作物をグループ化して農薬登録するための作物残留値予測手法の開発(PDF : 1909.0KB)
1 研究の背景・目的・成果
【背景】作物別に農薬の作物残留試験を行う従来の方法では、地域特産作物の農薬登録が進まないために、生産現場では病害虫・雑草防除に苦慮している。その解決に新たな作物群での登録(グループ化)が求められている。
【目的】葉菜類を中心に作物残留の変動要因を解析し、作物残留値予測手法を開発することで、合理的かつ効率的に作物群の単位で迅速に農薬登録を可能とするための新たなシステムを提案する。
【成果】 「収穫部位への付着水量と同部位の成長による希釈に基づいて、農薬の最大残留濃度と減衰パターンを推定する」というコンセプトの有効性を確認し、作物グループ化の可能性を示唆した。
2 研究の内容・主要な成果
新しいコンセプトの構築:葉菜類の農薬残留特性の推定には、面積を含む複雑な要因解析が必要であったが、「収穫部位への付着水量と同部位の成長による希釈」だけで農薬の作物残留特性に基づく新たな作物グループ化を提案した。
この提案について、異なるアプローチから有効性を確認した。
(1) 農薬の最大作物残留量推定モデル:薬液付着量(*1)と成長率(*2)に基づいて、作物残留量の分布を推定し、その分布特性に作物間で違いがあることを示した。
*1 薬液付着量:浸漬重量法によって求めることができた。
*2 成長率:葉長や葉幅によって、葉重の変化(成長)を推定できた。
(2) 農薬抄録における作物残留試験データの解析:葉菜を中心とした野菜類全般の膨大なデータから、付着量と減衰(≒成長)を推定し、その二次元分布から作物を分類できる可能性を示唆した。
(3) 農薬の作物残留減衰推定モデルの開発:作物・土壌・大気等における変化を推定するモデルに、“成長”の要因を導入し、感度解析によって、農薬の付着量と成長が主要因であることを示唆した。
(4) 新しい作物分類法の開発:自己組織化特徴マップ(Self-Organizing feature Maps, SOM)を活用して、作物の特徴、付着量、成長、減衰等の多次元の情報を二次元(平面)に落として、グループ化(可視化)できることを示した。
3 開発した成果の展開方向
(1) 農薬抄録における作物残留試験データベース:葉菜類、果菜類、茎菜類、花菜類等について、同一フォーマットで、約5,000試験を収録した(非公開)。
(2) 農薬の最大作物残留量推定モデル:リスク分析専用ソフトウエアに推定モデルを組み込み、薬液付着量と成長率の情報によって、作物残留量の分布を推定できるシステムを構築した。本システムは、今後農薬登録に関連した作物グループ化の有用なツールとなり、作物郡単位の迅速な農薬登録が可能となる。
【普及目標】葉菜類について
(1) 3年後:薬液付着量や成長測定法を標準化し、現場普及を目指す。
(2) 3年後:作物残留推定法を確立し、現場で試行できるようにする。
(3) 3~5年後:上記技術を利用した地域特産作物に関する現場データを蓄積する。
(4) 将来的には、農薬登録の作物群策定や代表作物選定にあたって農林水産省に貢献する。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
消費者に対して、多種多様な地域特産作物を安定的かつ安価に供給ができる。そのことによって、健康志向の観点から、より多くの種類の食品の摂取が推奨されている国民の需要を満たすことができる。

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