酸化しないオメガ3高度不飽和脂肪酸素材の開発
- 課題番号
- 26057A
- 研究グループ
- 北海道大学大学院水産科学研究院、 農研機構北海道農業研究センター
- 研究総括者
- 北海道大学 宮下 和夫
- 研究タイプ
- 一般型 Bタイプ
- 研究期間
- 平成26年~28年(3年間)
- PDF版
- 酸化しないオメガ3高度不飽和脂肪酸素材の開発(PDF : 3779.5KB)
1 研究の背景・目的・成果
目的:酸化されないオメガ3高度不飽和脂肪酸(PUFA)素材を、未利用・低利用農産植物葉部から開発する。
背景:ビタミンEなどを添加する既存技術では、オメガ3PUFAの酸化による風味劣化の抑制は困難。
成果:ケール残渣などの農産植物葉部からオメガ3PUFAに富む素材を開発した。
素材のオメガ3PUFAは主にグリセロ糖脂質(GL)として存在するため酸化されにくく、さらに、スフィンゴ塩基などを抗酸化剤に活用することで、一定期間風味劣化のまったくないオメガ3素材を得た。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 約100種の農産葉部原料中の脂質を分析し、大麦・小麦若葉、ビート葉およびケールなどの有望なオメガ3PUFA素材を見出した 。
(2) 脂質中のクロロフィルの除去法について、クエン酸や濾過助剤などを用いた新規の分離法を確立した。
(3) 植物葉部脂質の主成分であるグリセロ糖脂質(GL)の高い酸化安定性と、スフィンゴイド塩基とトコフェロールを組み合わせた抗酸化法を利用することで、オメガ3PUFAの風味劣化を一定期間完全に防止できることを明らかにした 。
(4) 植物脂質中のα-リノレン酸は主にGL形態で存在するために吸収性されやすいこと、スクワレンがα-リノレン酸からDHAへの変換促進作用を示すことを明らかにした 。
【公表した主な特許・論文】
(1) 特願 2016-254607 特許名 脂質抽出物の製造方法 (出願人:北海道大学)
(2) Kuroe M. et al. Dietary spinach ALA enhances liver n-3 fatty acid content to greater extent than linseed oil in mice fed equivalent amounts of ALA. Lipids 51:39-48 (2016).
(3) Uemura M. et al. Inhibitory effect of dihydrosphingosine with α-tocopherol on volatile formation during the autoxidation of polyunsaturated triacylglycerols. J. Oleo Sci. 65:713-722 (2016).
3 開発した成果の展開方向
(1) 需要が増大しているオメガ3PUFA素材原料として、これまで利用されなかった農産葉部資源を活用する。
(2) オメガ3PUFA素材利用の最大の問題点となっていた酸化による風味劣化防止技術により、素材の応用範囲が広がる。
【開発目標】
(1) 2017年は、これまでの成果を基に、さらに汎用性と経済性に優れたオメガ3PUFA素材の製造法を開発。
(2) 2018年は、農産葉物原料から得たオメガ3PUFA素材を用いた製品の商品化 。
(3) 3~5年後には、様々な一般食品へのオメガ3PUFA素材の応用と普及(卓上油など) 。
(4) 将来的には、農産葉部由来素材が、魚油と並んでオメガ3PUFA市場の主要素材の一つとなること。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
風味劣化が起こりにくいオメガ3PUFA素材の提供により、オメガ3PUFA素材を様々な日常食品を通じて国民が気軽に、また、安価に利用できる。これにより、生活習慣病などの疾病リスクが軽減され、医療費削減などへの寄与が期待できる。
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北海道大学水産科学研究院
宮下和夫
TEL 0138-40-8804
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