大麦における機能性多糖β-グルカンの遺伝的制御技術の開発
- 課題番号
- 26053A
- 研究グループ
- 農研機構九州沖縄農業研究センター、
岡山大学資源植物科学研究所 - 研究総括者
- 農研機構九州沖縄農業研究センター 塔野岡 卓司
- 研究タイプ
- 一般型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成26年~28年(3年間)
- PDF版
- 大麦における機能性多糖β-グルカンの遺伝的制御技術の開発(PDF : 1129.6KB)
1 研究の背景・目的・成果
大麦の穀粒に含まれる多糖β-グルカンには、血中コレステロール量低減、血糖値上昇抑制等の健康維持機能性があることが証明されており、大麦は生活習慣病の予防や改善に貢献できる優れた機能性食材である。大麦の高付加価値化と用途拡大のためには、β-グルカンを高含有する品種の開発が求められているが、β-グルカン合成に関わる遺伝子の全容解明は途上にあり、β-グルカン合成量を制御する遺伝子はなお不明である。
そこで、β-グルカンを高含有する大麦品種の開発を加速化するため、β-グルカン含量を高める遺伝子を解明するとともに、そのDNAマーカーと育種素材系統を開発した。
2 研究の内容・主要な成果
(1) β-グルカン含量を高める遺伝子解明のため、二条裸麦の遺伝分析用集団として、国内基幹品種「ユメサキボシ」(低β-グルカン、うるち性)と外国産の高β-グルカン品種(もち性)の交配組合せから240系統からなる組換え自殖系統群(RILs)を作出した。
(2) 組換え自殖系統群を用いて、7染色体にSNPマーカー1,078個を平均1.2cM間隔で配置したギャップのない高密度遺伝地図を構築するとともに、本連鎖地図を用いて、β-グルカン含量を高める遺伝子として、もち性遺伝子(wax)以外に、新たに2座の量的遺伝子座(QTL)を解明した。
(3) 高β-グルカン系統の効率的な選抜に利用できる可能なβ-グルカンの簡易定量法を開発した。
(4) 外国産の高β-グルカン品種に「ユメサキボシ」を2回交配して作出した戻し交配自殖系統群(BILs)からの系統選抜により、「ユメサキボシ」対比で同等以上の収量があり、約2倍のβ-グルカンを含む育種素材系統を開発した。
3 開発した成果の展開方向
(1) β-グルカンの高含量化遺伝子に関するDNAマーカーは、高β-グルカン品種開発を効率化・加速化するための必須技術であり、一連の研究成果は、国内の大麦育種機関において高β-グルカン品種を開発するための基盤技術となる。
(2) 育種素材系統は、国内の大麦育種機関において高β-グルカン品種を開発するための育種母本として活用できる。
【開発目標】
(1) 2021年頃には、高β-グルカン品種が開発されると見込まれる。
(2) 2024年頃には、約1,000ha程度の高β-グルカン品種の普及を目指す。
(3) 将来的には、新興国等への製品輸出も視野に、国内外の機能性食材の市場を開拓するととともに、国産大麦のプレミアム化による国内自給力向上に貢献する。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
外国産大麦に対抗しうる高品質な高機能性品種が早期に開発され、国産大麦の需要・生産拡大と食料自給率向上、国民の生活習慣病の予防・改善に貢献する。
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