絹フィブロイン基盤メディカルシートデバイスの創製と心臓組織修復材料への応用
- 課題番号
- 26051A
- 研究グループ
- 東京農工大学大学院工学研究院・農学研究院、
大阪医科大学胸部外科、
農研機構新素材開発ユニット、
日本毛織株式会社 - 研究総括者
- 東京農工大学 中澤 靖元
- 研究タイプ
- 一般型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成26年~28年(3年間)
- PDF版
- 絹フィブロイン基盤メディカルシートデバイスの創製と心臓組織修復材料への応用(PDF : 1442.5KB)
1 研究の背景・目的・成果
心臓修復パッチは、心臓の右心室と左心室の隔壁(心室中隔)に穴が空く病気(心室中核欠損)や心臓手術でできた欠損部の修復治療に用いるシート状の「当て布」である。現在市販されている心臓組織修復パッチの素材は、ePTFE(延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン)が主な原料であるが、これらのパッチは、手術時の漏血性や石灰化、血液の凝固などに課題を残している。
そこで本研究では、上記課題を克服すべく、シルクフィブロインを原料とした新たな心臓修復パッチの開発を目的とする。開発する新規心臓修復パッチは、移植部位においてシルクフィブロインの優れた生体適合性により、その一部が自己組織に置換される。これは、これまでの心臓修復パッチにはない、「成長性」を有するパッチとなり、現状の問題を克服する、全く新しいデバイスとしての利用が可能である 。
3年間の開発研究により、新規心臓修復パッチの原料となりうるシルクと合成高分子の複合化に成功した。
このパッチは、既存のパッチと比較して安全性や漏血性、石灰化抑制に優れ、また組織再生を促進することから、次世代型心臓修復パッチとして期待される。
2 研究の内容・主要な成果
(1) シルク複合化材料について合成高分子の探索を系統的に実施し、複合化材料の最適化に成功した。
(2) 各種機能性物質の固定化法を確立し、ヘパリンや血管新生ペプチドの固定化を成功させた。
(3) シルク複合化パッチの埋植評価により、安全性や組織再生、抗石灰化等の優れた特性を明らかにした。
(4) シルク-ウレタン系高分子複合化パッチの心臓組織修復パッチとしての有効性を実証した。
【公表した主な特許・論文】
(1) 特願2015-181130 組成物、医療用組成物及び組成物の製造方法 (中澤靖元、富永洋一、亀田恒徳、根本慎太郎:東京農工大学・農研機構・大阪医科大学)
(2) 特願2016-33681 不溶化処理フリー絹フィブロイン素材(吉岡太陽、小島桂、秦珠子、亀田恒徳:農研機構)
(3) Tsukawaki S. et al. Studies on the potential risk of amyloidosis from exposure to silk fibroin Biomedical Materials 11, 65010 (2016).
3 開発した成果の展開方向
(1) シルク製心臓組織修復パッチについて、3~5年後に非臨床試験を終了し、臨床試験への体制を整える。
(2) 将来的にシルクシルクフィブロインを基盤材料とした心臓修復パッチの実用化を目指す。
(3) 本パッチの製造には、国内養蚕農家が供給する熟蚕カイコを原料として利用することから、本パッチの実用生産は養蚕振興につながる。
【開発目標】
(1) 2017年は、新規機能性シルク開発等の基礎研究と共に、基準に適合した材料作製法の検討を実施する。
(2) 2018年は、本パッチを市販品と同等の強度や生体適合性を達成し、本格的な非臨床試験を開始する。
(3) 3~5年後には、製造管理、品質管理の基準(GMP基準)および、医薬品の非臨床試験の安全性に関する信頼性を確保するための基準(GLP基準)に適合した材料作製法の確立し、非臨床試験終了を目標とする。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
国産医療機器の開発により、国産市場参入や国民の健康等への貢献に加え、国産カイコの需要増加やシルクの付加価値を向上させることで、農業分野への貢献も期待できる。
この研究成果を活用しませんか?
この研究に関するご相談や質問等は、以下よりお問い合わせいただけます。
東京農工大学
中澤靖元
TEL042-388-7612
同じ分野の研究成果
お問合せ先
農林水産技術会議事務局研究推進課産学連携室
担当者:産学連携振興班
ダイヤルイン:03-3502-5530
FAX番号:03-3593-2209