ラビリンチュラ類を用いた機能性脂質の生産基盤の構築と活用
- 課題番号
- 26050A
- 研究グループ
- 九州大学大学院農学研究院、 理化学研究所、日本水産株式会社
- 研究総括者
- 九州大学大学院農学研究院 伊東 信
- 研究タイプ
- 一般型 Aタイプ
- 研究期間
- 平成26年~28年(3年間)
- PDF版
- ラビリンチュラ類を用いた機能性脂質の生産基盤の構築と活用(PDF : 2314.9KB)
1 研究の背景・目的・成果
魚油由来のエイコサペンタエン酸(EPA、20時05分n-3)やドコサヘキサエン酸(DHA、 22時06分n-3)等のn-3高度不飽和脂肪酸(n-3PUFA)は、機能性食品、医薬品、養殖飼料の素材として産業利用されているが、世界的な需要増加や魚資源の減少・保護の観点からn-3PUFAの新しい供給源の開発が急務となっている。ラビリンチュラ類は、新しいn-3PUFA生産源としてのみならず、新機能が期待できる生理活性脂質の生産源としても有望である。 本研究では、日本発イノベーションとして産業レベルでEPA、n-3DPAを生産する技術基盤を確立するとともに、ラビリンチュラ類がn-3PUFA代謝物、ステロール類、スフィンゴ脂質などの生理活性脂質の卓越した生産源であることを明らかにした。
2 研究の内容・主要な成果
(1) マーカーリサイクル法など、ラビリンチュラ類の実用的な分子育種技術を開発した (特願2016-14770)。
(2) EPAとn-3DPAを産業レベルで生産する技術を開発した (2016年度日本農芸化学会トピックス賞受賞)。
(3) n-3PUFA代謝物を野生株の300倍生産できる変異株を取得し、それらの機能解明に道を拓いた。
(4) 新規スフィンゴ脂質、糖脂質の生合成系を解明し、それらの生産源として活用できることを示した。
(5) 植物型、動物型、真菌型ステロール類の生合成系を解明し、それらの選択的生産を可能にした。
【公表した主な特許・論文】
(1) 特願 2016-14770 高度不飽和脂肪酸を含む油脂の製造法 日本水産(株)
(2) 特願 2016-204894 多重遺伝子発現法 九州大学
(3) 伊東 信.ラビリンチュラ類におけるDHAおよびDHA含有リン脂質の生合成機構. 海洋と生物 38 (2016)
(4) Makoto Arita. Eosinophil polyunsaturated fatty acid metabolism and its potential control of inflammation and allergy. Allergology International 65, S2-5 (2016)
3 開発した成果の展開方向
(1)EPAを産業レベルで発酵生産する。
(2)新しい機能性食品素材としてのn-3DPAの可能性を探る。
(3)n-3PUFA(中性脂質低減)に加えて、n-3PUFA代謝物(抗アレルギー)、植物ステロール(コレステロール低減)、スフィンゴ脂質(保湿効果)などの新機能を付与した機能性食品素材を生産する。
【開発目標】
(1) 2017年は、マーカーリサイクル法を活用してボトルネックを解消し、EPA、n-3DPA生産量を30%増大する。
(2) 2018年は、食品・飼料分野へ適用範囲拡大のため非遺伝子組換え体によるn-3PUFA生産法を構築する。
(3) 3~5年後には、魚油EPAと同等以上のコストパフォーマンスを実現する。
(4) 将来的には、安価で安心・安全なn-3PUFA健康食品・サプリメントを上市する。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
安心・安全なn-3PUFAおよびその関連製品の安定供給を通して国民の栄養バランスの適正化に貢献し、国民の健康とQOLの向上と医療費削減に寄与する。
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九州大学大学院
農学研究院
伊東 信
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