ミトコンドリア蛋白の構造種差に基づくアグロケミカルシーズの創生
- 課題番号
- 26021A
- 研究グループ
- 京都大学農学部、同理学部、 農研機構生物機能利用研究部門、徳島大学疾患プロテオゲノムセンター、
北里大学感染制御科学府、京都学園大学 - 研究総括者
- 京都大学 三芳 秀人
- 研究タイプ
- 技術シーズ 【一般A】
- 研究期間
- 平成24年~28年(5年間)
- PDF版
- ミトコンドリア蛋白の構造種差に基づくアグロケミカルシーズの創生(PDF : 1182.1KB)
1 研究の背景・目的・成果
日本の農薬産業界は、農薬開発のための新規な標的分子の探索を独自に行うことが極めて難しいという弱点を抱えている。この課題を克服するため、大学等の公的研究機関が“標的分子の探索” という基礎研究の一端を担う必要がある。本研究では、ミトコンドリアの基質輸送体を新しい標的分子と定め、農業害虫やヒトを含む種々の生物の輸送体を酵母ミトコンドリアで機能発現させたスクリーニング系を開発し、特定の農業害虫の輸送体のみを高選択的に阻害する化合物を探索することで農薬開発のシーズ化合物を発見する。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 5種の輸送体(ADP/ATP輸送体、リン酸輸送体、S-アデノシルメチオニン輸送体、フラビン輸送体、CoA輸送体)、20種の農業害虫について、ミトコンドリア輸送体のcDNAを作成した。
(2) 異生物のミトコンドリア輸送体を出芽酵母のミトコンドリアに機能発現させ、酵母の生育阻害を指標として、輸送体を阻害する化合物のスクリーニング系を開発した。
(3) 開発したスクリーニング系により天然物約3千検体、微生物培養液約3万検体を探索し、新規化合物5個、構造既知化合物12個を発見した。
(4) 発見した化合物の構造簡略化を図ると同時に、光親和性標識法によって輸送体中における結合部位を明らかにし、分子シミュレーションに基づいて作用機構を解明した。
【公表した主な特許・論文】
(1) 菅原亮平他: Two adenine nucleotide translocase paralogues involved in cell proliferation and spermatogenesis in the silkworm Bombyx mori. PLOS ONE, 10, e0119429 (2015).
(2) 浅見行弘他: Ascosteroside C, a new mitochondrial respiration inhibitor discovered by pesticidal screening using recombinant Saccharomyces cerevisiae. J. Antibiot. 68, 649-652 (2015).
(3) 菅原亮平他: Tissue-specific expression and silencing phenotypes of mitochondrial phosphate carrier paralogs in several insect species. Insect Mol. Biol. (2016) in press.
3 開発した成果の展開方向
(1) 発見した多数の天然化合物の構造は極めて複雑であることから、これらを簡略化し、農薬開発のシーズ化合物として適した構造へ誘導する。
(2) 研究成果として得られた化合物情報を農薬産業界に広く発信・提供する。
(3) 開発した酵母スクリーニング系を利用して、農薬メーカーが保有する化合物ライブラリーをスクリーニングし、有望なシーズ化合物を探索する。
【開発目標】
(1) 本研究で得られた化合物情報を基盤にして農薬メーカーと共同研究体制を築き、メーカーが独自のリード化合物へ合成展開するためのサポートを行い、選択性に優れた新規農薬の開発研究を推進する。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
農薬産業界における新農薬開発の研究基盤を底上げし、安全性に優れた高性能の農薬をより短期間でより安価に生産する可能性が開け、ひいては農業従事者や消費者にとっても大きな恩恵に繋がる 。
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