ミカンコミバエ種群の根絶対策に資する寄生果率の解明と低温殺虫技術の確立
- 課題番号
- 27040C
- 研究グループ
- 農研機構果樹研究所、九州沖縄農研センター、
鹿児島県農業開発総合センター - 研究総括者
- 農研機構果樹研究所 高梨 祐明
- 研究タイプ
- 重要施先対応型
- 研究期間
- 平成27年(1年間)
- PDF版
- ミカンコミバエ種群の根絶対策に資する寄生果率の解明と低温殺虫技術の確立(PDF : 890.9KB)
1 研究の背景・目的・目標
ミカンコミバエ種群は、過去に南西諸島及び小笠原諸島に分布していたものを1986年までに根絶した経緯があるが、2015年9月以降、奄美大島で多数個体のトラップ誘殺が続き、同地域の農産物の多くが移動制限の対象となった。このため、本研究では、
1.ミカンコミバエ種群寄主果実の冬期寄生率調査
2.ミカンコミバエ種群幼虫を死滅させるカンキツ果実の実用的な低温処理技術の確立
の2課題を実施し、移動禁止措置の早期解除による経済的被害の最小化につながるデータ取得を目指した。
2 研究の内容・主要な成果
(1) ミカンコミバエ種群の誘殺の多かった大島郡瀬戸内町の30園地から、収穫期のポンカン果実を合計30,634個集め、すべてを切開調査して寄生幼虫が皆無であることを確認した。
(2)ミカンコミバエ種群の誘殺の多かった大島郡瀬戸内町の30園地から、収穫期のタンカン果実を合計28,830個集め、すべてを切開調査して寄生幼虫が皆無であることを確認した。
(3)大島郡瀬戸内町の11地区において、自然植生から8種植物(イヌビワ、ゲッキツ、オオイタビ、バンシロウ、ガジュマル、パパイヤ、ハスノハギリ、タンカン(放任樹))の果実を採集し、切開調査を行った結果、いずれの樹種からもミカンコミバエ種群の幼虫を検出することはなかった
(4)収穫期のタンカン果実を、内部のミカンコミバエ種群幼虫が死滅することが確認されている1℃で17日間の低温処理をした結果、外観や食味に商品性を損なう障害は発生しないことを確認した。
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び取り組み状況
(1) ポンカンとタンカンの冬期寄生果率調査の結果から、園地での増殖は確認されなかったが、今後も継続して調査をする必要がある。
(2) 細部の幼虫を死滅させる条件の低温処理は果実品質に悪影響を及ぼさなかったことから、万が一にも寄生果を流通させないための技術として実用性が確認された。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
(1) 奄美大島の重要な農産物であるポンカンとタンカンについて、果実廃棄量の抑制による経済的影響の最小限化が期待される。
(2) 国産カンキツの安定供給を支援することで生産者や流通、小売業者及び消費者に貢献する。

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果樹茶業研究部門
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