モモせん孔細菌病の多発生産地における効果的な防除技術の開発
- 課題番号
- 27038C
- 研究グループ
- 長野県果樹試験場、新潟県農業総合試験場園芸研究センター、
福島県農業総合センター果樹研究所、和歌山県果樹試験場カキ・モモ研究所、東京農業大学、農研機構中央農業総合研究センター - 研究総括者
- 農研機構果樹研究所 中畝 良二
- 研究タイプ
- 重要施策対応型
- 研究期間
- 平成27年(1年間)
- PDF版
- モモせん孔細菌病の多発生産地における効果的な防除技術の開発(PDF : 865.9KB)
1 研究の背景・目的・目標
モモは全国的に栽培される重要な果樹品目である。近年、我が国のモモ産地ではモモせん孔細菌病が多発生しており、福島県など継続して甚大な被害を受けている地域では全く収穫ができない園地も発生する事態に発展している。このため、モモせん孔細菌病の多発産地における効果的な防除技術の開発が求められている。そこで、モモ主産県の研究機関と連携してモモせん孔細菌病の多発生要因を科学的に解明し、効果的な防除を目的とした知見の集積と技術開発を目標として本研究を実施した。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 病害虫防除所の巡回調査データや気象観測データ等を利用してコホート内症例対照研究およびロジスティック回帰分析を実施し、「収穫期の果実発病程度」や「発病葉率」と関連する要因として、5月や前年10月の降雨量などが選抜された。
(2) 福島県および長野県の各地域にストレプトマイシンに対して感受性が低い菌が存在することを確認した。具体的には、長野県の38園地から分離した211菌株のうち12園地に由来する27菌株、福島県の30園地から分離した2923菌株のうち19園地に由来する1462菌株が実用濃度(125~250ppm)のストレプトマイシン剤を加えた培地上で生育した。なお、いずれの菌株もテトラサイクリン剤に対する感受性は低下していなかった。
(3) 新規資材(成分未公表)について防除効果を調査したところ、既存の抗生物質剤とほぼ同等の効果を示すことを確認した。
(4) 秋季(9~12月)の風雨対策によって、この間の感染を抑制できる可能性が示された。なお、秋季の防除効果を冬季の病原菌検出結果で比較したものであり、春季及び収穫期までの発病抑制の効果等を引き続き検証する必要がある。
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び取り組み状況
(1) 病原菌のストレプトマイシン剤に対する低感受性菌に関する情報については、各産地での防除体系の検討への活用を図る。
(2) 多発生要因の解析の結果、春型枝病斑の切除、生育期の防除、樹高や風当たりの制御、秋季の防除の重要性が改めて示唆された。これらの総合防除のための情報を現場で活用できる技術資料として取りまとめた。
(3) 得られた知見に基づいて現地実証試験を行い、モモせん孔細菌病による被害の効果的防除技術を体系化する取り組みを開始する予定。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
(1) 本研究の成果を発展させることで、モモせん孔細菌病による被害が軽減され、生産者が安心してモモの生産に取り組むことが可能となる。
(2) 旬にモモを安定的に供給できることから、消費者は旬の美味しいモモが賞味できる。また、新たな需要拡大・6次産業化により、食品関連産業や観光業への経済効果が期待できる。
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農研機構
果樹茶業研究部門
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