和牛肉食味のNMRメタボロミクスに基づく迅速評価技術の確立
- 課題番号
- 27014B
- 研究グループ
- 山形県農業総合研究センター 畜産試験場
東京大学 大学院農学生命科学研究科 - 研究総括者
- 山形県農業総合研究センター 畜産試験場 小松 智彦
- 研究タイプ
- 産学機関結集型B(FS)
- 研究期間
- 平成27年(7月~12月)
- PDF版
- 和牛肉食味のNMRメタボロミクスに基づく迅速評価技術の確立(PDF : 834.0KB)
1 研究の背景・目的・目標
和牛肉の一番の特徴は、高度の脂肪交雑(霜降り)と、それによる肉の軟らかさである。これまでに脂肪交雑の改良は十分に進み、現在は脂肪の量だけではなく脂肪の質(オレイン酸などの脂肪酸)や、赤身のうま味等に着目した販売戦略に注目が集まっている。そこで本研究では、最終的には枝肉市場等の流通現場で和牛全頭の品質・食味特性を「見える化」することを目標に、まずはその基盤技術となる核磁気共鳴(NMR)法と多変量解析を組み合わせたNMRメタボロミクスの手法を検討する。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 和牛肉の水溶性成分・脂溶性成分を分析可能なNMR測定条件を確立した(重水抽出液の分析時間4分、重クロロホルム抽出液の分析時間2分、合わせて6分の分析)。
(2) 上記手法によりアミノ酸や脂肪酸等、26項目を一斉に定量分析できることを明らかにした。
(3) 枝肉市場等の流通現場で分析対象とする筋肉部位として、経済的損失が少なく、ロース等の主要な食用部位の成分値との相関が高い僧帽筋が適切であった。
(4) 熟成前後の成分変化(熟成12週間までのアミノ酸等の成分変化)や、うま味、やわらかさ等の食味特性評価に本手法が活用可能であることを見出した。
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1) 一連の成果は、枝肉市場等の流通現場で和牛肉の品質・食味特性を「見える化」するための基盤技術となる。
(2) 流通現場での実用化のために、小型化・低価格化が進んでいる最新型のNMR装置(永久磁石を用いた卓上型の装置)を検討していく。
(3) 品質評価情報を生産者にフィードバックすることにより、牛肉生産のための飼養管理技術の改善が図られる。大量に蓄積した品質評価情報は、種雄牛・繁殖雌牛の育種改良に用いることができる。
4 開発した技術・成果が実用化されることによる国民生活への貢献
(1) 消費者は牛の個体識別番号の検索を通じて、現在入手できる産地や飼養管理情報のほか、品質・食味特性に関する情報を享受することができるようになる。
(2) その結果、消費者が好みに応じた牛肉を選択することが可能となるほか、焼肉やしゃぶしゃぶなど調理法に適した牛肉の選択購入が可能となる。
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畜産試験場
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