分化全能性の分子機構の解明と実用作物への応用展開
- 課題番号
- 26018A
- 研究グループ
- (研)理化学研究所環境資源植物研究センター
- 研究総括者
- 理化学研究所 杉本 慶子
- 研究タイプ
- 技術シーズ【若手】
- 研究期間
- 平成23年~27年(5年間)
- PDF版
- 分化全能性の分子機構の解明と実用作物への応用展開(PDF : 1308.7KB)
1 研究の背景・目的・目標
世界の環境・食料問題が深刻化する中、農作物の飛躍的な生産性向上や新規形質の付与などが期待されている。そのための主要技術の一つが形質転換をはじめとする分子育種法であるが、その根幹技術である組織培養は植物ホルモンに依存しており、効率良く安定した系が確立されている植物種は非常に少ない。
そこで、広範な実用作物種において収量や機能が飛躍的に向上した新品種の開発や優良品種の大量生産、さらには培養細胞を用いた有用物質生産を可能とする効率的な新規組織培養技術開発を目標として、植物細胞の脱分化・再分化を制御する分子機構の解明とその実用植物への応用を行う。
2 研究の内容・主要な成果
(1)脱分化因子WINDの上下流に存在し、脱分化と再分化に関連する制御因子を特定した。
(2)これら制御因子の発現調節により脱分化と再分化を効果的に制御可能なことを明らかにした。
(3)トマト、ナタネ、レタス、ジャガイモ、タバコ、アサガオといった有用作物種において、これら制御因子の発現調節により再分化効率・形質転換効率が向上可能であることを証明した。
公表した主な特許・論文
(1)特願2014-090532 植物の脱分化細胞製造方法及び植物細胞の脱分化誘導剤 岩瀬哲、杉本慶子、池内桃子(理化学研究所)
(2) Ikeuchi, M. et al. PRC2 represses dedifferentiation of mature somatic cells in Arabidopsis. Nature Plants 1, 15089 (2015).
(3) Iwase, A et al. WIND1-based acquisition of regeneration competency in Arabidopsis and rapeseed. J. Plant Res. 128, 389-397 (2015).
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1)新規組織培養法の効率化と汎用化を推し進めることにより、植物ホルモンに依存した従来法では困難だった広範な実用作物種において分子育種による新品種作出が加速される。
(2)脱分化・再分化制御因子の化学物質による発現調節が可能となれば、再分化促進薬剤の製品化・商業化に伴う新しい産業を創造できる。
4 開発した技術・成果が活用されることによる国民生活への貢献
(1)栽培が容易で高収量な農作物の育種とその迅速な大量増殖に利用することで、食料の安定生産と食料自給率の向上に寄与でき、安定した国民生活に貢献できる。
(2)分子育種実用化を加速させることで国内外の生産者・消費者のニーズに迅速に対応するオーダーメード育種を実現し、日本農業の国際競争力強化と成長産業への転換が期待できる。
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