トマトの単為結果の分子機構解明
- 課題番号
- 26013A
- 研究グループ
- 筑波大学生命環境系、 カゴメ株式会社、
理化学研究所 - 研究総括者
- 筑波大学生命環境系 江面 浩
- 研究タイプ
- 技術シーズ【一般】
- 研究期間
- 平成23年~27年(5年間)
- PDF版
- トマトの単為結果の分子機構解明(PDF : 1009.6KB)
1 研究の背景・目的・目標
トマトは、冬期と夏期の着果不良が問題であり、ホルモン剤利用等による着果促進処理が不可欠である。
受粉無しで果実が実る単為結果性はその問題を解決し、果実生産の増収をもたらす有力なツールである。しかし、不良形質を伴わない真の単為結果性遺伝子は同定されていない。本研究では、トマトの遺伝資源とオミックス技術を活用して、単為結果に関わる多数の遺伝子の同定とその遺伝子ネットワークを解明する。さらに、そのネットワークから真の単為結果遺伝子を特定して利用・制御技術を確立する。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 新規のトマト単為結果性変異体を10系統単離し、4系統で原因遺伝子を同定した。特にジベレリン感受性の向上した系統及び高糖度果実を生産する系統の2件について特許出願を行った。
(2) ジベレリンの感受性を向上させる遺伝子変異を活用して単為結果を効率的に示す中間母本を作出した。
加えて、この中間母本の栽培適性や果実品質を調査して当該遺伝子変異の実用性を証明した。
(3) 栄養器官で遺伝子発現を誘導しないプロモータを活用した遺伝子工学的手法により、単為結果性に付随する悪影響を軽減させる制御技術を開発した。
(4) 独自に同定した3系統の単為結果性変異体を活用した大規模なオミックス解析を行い、単為結果性遺伝子ネットワークに普遍的に存在する遺伝子群・代謝産物群を明らかにした。
公表した主な特許・論文
(1) 特願 2013-231495 変異型植物 出願人(筑波大学、カゴメ株式会社、理化学研究所)
(2) 特願 2015-156140 高糖度果実を産生する単為結果性植物及びその作出方法 出願人(筑波大学)
(3) Shinozaki. et al. Ethylene suppresses tomato (Solanum lycopersicum) fruit set through modification of gibberellin metabolism. The Plant Journal 83, 237-251 (2015).
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1) 同定された単為結果性変異体は、単為結果品種開発過程で既存の遺伝子変異に代わる新しい育種素材として活用される。その結果、新しい単為結果性品種の育成が加速する。
(2) 既に育成した中間母本の有効性が証明されたため、DNAマーカーを伴った育種素材として効率よく実用品種の開発、および市場導入されることが期待される。
(3) 単為結果性遺伝子ネットワークの中から、不良形質を付随しない単為結果性のみを制御する遺伝子が同定され、育種の遺伝資源として活用される。
4 開発した技術・成果が活用されることによる国民生活への貢献
(1) 農業従事者の高齢化と農業の担い手不足が進む我が国において、着果処理作業の不要な省労力、省資源でのトマト栽培が確立でき、農業従事者のQOLが向上する。加えて、生産コストの減少とともに収量増加も達成される。
(2) トマトの周年生産が安定化することで安価で栄養価に富むトマトの安定的供給が達成され、生活習慣病の予防が進み、医療費負担の増加に歯止めをかけることができると期待される。
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筑波大学生命環境系
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