糸状菌の培養環境に適応した物質生産制御システムの開発
- 課題番号
- 26011A
- 研究グループ
- 名古屋大学大学院生命農学研究科、
東北大学大学院農学研究科 - 研究総括者
- 名古屋大学 小林 哲夫
- 研究タイプ
- 技術シーズ【一般】
- 研究期間
- 平成23年~27年(5年間)
- PDF版
- 糸状菌の培養環境に適応した物質生産制御システムの開発(PDF : 1002.4KB)
1 研究の背景・目的・目標
糸状菌による有用酵素生産では、生産量や酵素組成を鑑み液体培養と固体培養が使い分けられる。従って、効率的な生産性向上には液体と固体の培養環境にそれぞれ適応した汎用性のある物質生産システムの開発が重要であるが、現行技術では十分な対応は困難であった。そこで、転写制御マシナリーの改良による新奇な酵素生産性改良技術、気体に応答する人工シグナル伝達系の構築とその利用技術の開発を目標とした。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 植物性多糖分解酵素群の生産を制御する転写活性化と転写抑制のメカニズムを明らかにした。
(2) キメラ転写因子の利用による酵素生産条件の改変や恒常的活性型転写因子の構築に成功した。例えばキメラ転写因子AM1を用いるとセルロースによるアミラーゼ生産誘導が可能となる。
(3) カーボンカタボライト抑制の解除による植物性多糖分解酵素の生産性向上技術を開発した。例えば転写抑制因子CreAの遺伝子破壊に加えてCreB遺伝子を破壊することによりアミラーゼ生産を飛躍的に向上させることができる。
(4) エチレン応答型の人工シグナル伝達系の開発に成功し、エチレンによる有用物質生産制御を可能にした。
公表した主な特許・論文
(1) Yamakawa, Y. et al. Regulation of cellulolytic genes by McmA, the SRF-MADS box protein in Aspergillus nidulans. Biochem. Biophys. Res. Commun. 431, 777-782 (2013).
(2) 特願 2013-172640 グルコース抑制遺伝子破壊株およびそれを利用した物質の生産方法 五味勝也・田中瑞己(東北大学)
(3) 特願 2013-180652 EBD及びHKD含有融合ペプチド及び当該ペプチドを発現する形質転換体 阿部敬悦・中山真由美・吉見啓(東北大学)
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1) 糸状菌の液体培養、固体培養における多酵素同時生産や生産性の向上が可能となり、有用酵素生産のための開発期間の短縮やコスト削減を通して、酵素産業の国際競争力の向上につながる。
(2) 二次代謝産物などの有用物質は多くの場合単一転写因子が生合成系全体の酵素を制御する。従って、本成果や技術は有用低分子の効率的生産にも応用可能である。
4 開発した技術・成果が活用されることによる国民生活への貢献
(1) 生産コストの低減化を介して食品用酵素や有用低分子の流通が拡大し、食品産業、酵素産業、製薬産業を通して国民のQuality of Life (QOL)の維持・向上に貢献できる。
(2) バイオマス分解酵素の低コスト大量生産により、バイオマスや食品廃棄物を最大限に利用した循環型社会の形成に貢献できる。

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