ケミカルバイオロジーを基盤とした革新的な農薬等の探索研究
- 課題番号
- 26009A
- 研究グループ
- 国立研究開発法人理化学研究所 、 国立大学法人東京大学、国立大学法人名古屋大学
- 研究総括者
- 国立研究開発法人理化学研究所 長田 裕之
- 研究タイプ
- 技術シーズ【一般】
- 研究期間
- 平成23年~27年(5年間)
- PDF版
- ケミカルバイオロジーを基盤とした革新的な農薬等の探索研究(PDF : 1563.5KB)
1 研究の背景・目的・目標
植物病害やかび毒による汚染により農産物の収量低下や人畜の健康被害の問題が引き起こされている。本研究では、天然化合物ライブラリーを用いた探索等のケミカルバイオロジー的手法を用いることにより、問題解決に貢献することを目的にした。二次代謝活性化を可能にし、アフラトキシン生産制御薬剤、ムギ類赤かび病菌制御薬剤、イネいもち病菌制御薬剤をケミカルバイオロジー的手法で探索し、農薬等のリード化合物を取得することを目標にした。
2 研究の内容・主要な成果
(1)放線菌と糸状菌の二次代謝活性化を可能にし、新しいタイプの二次代謝産物生合成酵素を発見し、二次代謝活性化メカニズムを明らかにした。
(2)アフラトキシン生産を呼吸阻害剤が強力に阻害することを見出した。市販の呼吸阻害活性を示す農薬を用いたフィールド試験を行い、アフラトキシン生産抑制効果を示すことを明らかにした。
(3)ムギ類赤かび病菌のトリコテセン生産を抑制する化合物を取得し、これらのうちスレオニンはオオムギの穂に散布することによりトリコテセン生産を抑制することを見出した。
(4)イネいもち病菌のMBI-D農薬(メラニン生合成の脱水酵素阻害剤)耐性の原因となる農薬耐性型シタロン脱水酵素の強力な阻害剤MO-035を創製し、MBI-D農薬耐性菌の感染を強力に抑制することを見出した。
公表した主な特許・論文
(1) Yun, C.S. et al. Biosynthesis of the mycotoxin tenuazonic acid by a fungal NRPS-PKS hybrid enzyme Nature Commun. 6, 8758 (2015).
(2) 特願 2013-145423 アフラトキシン産生阻害剤、及びアフラトキシン汚染防除方法 作田庄平、城景子、ジヤンフェブリ プラボオ (東京大学)
(3) 特願 2015-160764 赤かび病菌かび毒産生抑制剤 木村真、前田一行、中嶋佑一、長田裕之、本山高幸、斎藤臣雄、近藤恭光(名古屋大学、理化学研究所)
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1)二次代謝を活性化させ、新しいタイプの二次代謝産物生合成酵素を発見したことにより、新たな天然化合物の取得が可能になった。天然化合物ライブラリー拡充や病害制御化合物探索への応用が可能になった。
(2)アフラトキシン及びトリコテセンの生産制御化合物を利用して、生産制御メカニズムを更に明らかにし、より効果が高い化合物を見出すことにより、食品中のかび毒の低減を可能にすることができる。
(3)イネいもち病菌のMBI-D農薬耐性菌に高い効果を示すMO-035の構造を最適化することにより、MBI-D農薬耐性菌の防除への展開が期待される。
4 開発した技術・成果が活用されることによる国民生活への貢献
(1)世界的に問題となっているかび毒汚染から農産物を守り、植物病害による収穫減少を防ぐことにより、安全な農産物の国民への安定供給を可能にする。また、かび毒汚染問題の解決による国際貢献を可能にする 。
(2)農薬等の探索を劇的に効率化し、将来的に食の安全を脅かす様々な病原体に対する迅速な対応を可能にする。
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