水稲初期生育を改善する革新的土壌管理技術と診断キットの開発
- 課題番号
- 25091C
- 研究グループ
- 自然農法国際研究開発センター、新潟県農業総合研究所基盤研究部、新潟大学農学部、アスザック株式会社P&D事業部、新潟県農林水産部経営普及課
- 研究総括者
- 自然農法国際研究開発センター 岩石 真嗣
- 研究タイプ
- 現場ニーズ対応型B
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- 水稲初期生育を改善する革新的土壌管理技術と診断キットの開発(PDF : 909.0KB)
1 研究の背景・目的・目標
水田土壌に施用された有機物は、土壌微生物により分解されて水稲の養分を生成する。その過程で土壌の還元化(酸欠状態)が進行するが、急激な還元すなわち異常還元が起きる場合には発根障害などの初期生育不良が発生する。この異常還元に伴う初期生育の不良は、有機栽培では特に問題となる。そこで本研究では、初期生育不良を予防する土壌管理技術、予防効果を確認する診断技術、診断結果に基づいた対応技術を開発し、それを製品化・マニュアル化することで、有機米の収量性を改善することを目標とした。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 代かき後土壌を培養し、酸化還元電位低下量、ガス発生量、溶存アンモニア態窒素量を診断することで、異常還元による初期生育阻害を田植え前に予測する簡易な診断キットを開発し、商品化に目途をつけた。
(2) 診断結果に基づく対応技術として、(1)田植え時の植付株数増により生育不良分を補う方法、(2)移植時期をずらし異常還元の害を軽減する方法、(3)追肥のタイミングを早め生育を改善する方法、を開発した。
(3) 水稲初期生育阻害物質である遊離硫化水素の簡易な測定法を開発するとともに、稲わらや米ぬかによる初期生育阻害を防止する管理として、秋施用・秋耕起・土壌の排水促進の効果を明らかにした。
(4) これら成果の活用による24組の比較実証試験で、平均で9%の増収効果や30%の雑草発生量の減少効果を確認した。うち対照区が不良環境条件にあった10組では、対応技術の適用によって目標とした15%以上の増収効果を得、対応策が増収とコスト低下につながることを確認した。
公表した主な特許・品種・論文
(1) 特願 2015-218346 硫化水素検知装置及び水田における硫化水素の発生状況確認方法 (白鳥豊、土田沙由理、古川勇一郎:新潟県、阿部大介、三木孝昭:自然農法国際研究開発センター )
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び取り組み状況
(1) 開発したキットはアスザック株式会社から販売予定となっている。
(2) 異常還元の予防・診断・対応という3つの観点から水稲の初期生育を改善するマニュアルを作成し、本年中にWebで公表する予定となっている。
(3) 本事業成果は「アグリビジネス創出フェア2015」や、雑誌「現代農業2015年10月号」(農文協)、各地有機農業講習会(22会場)において公表した。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
(1) 有機米の流通量増加やコスト低下により購入機会が増大するとともに、有機農産物の輸出拡大にも貢献できる。
(2) 就農希望者の約3割が実施を希望する有機農業への参入を後押しする。
(3) 有機農業は農地の様々な生きものの維持増進に有効であるため、生物多様性・農地・農村の保全に貢献できる。
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