西日本のモモ生産安定のための果肉障害対策技術の開発
- 課題番号
- 25079C
- 研究グループ
- 岡山大学、農研機構果樹研、岡山県農総セ農業研究所・
普及連携部、和歌山県果樹試かき・もも研・
那賀振興局、テイカ株式会社、西日本果実袋株式会社 - 研究総括者
- 岡山大学 森永 邦久
- 研究タイプ
- 現場ニーズ対応型A
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- 西日本のモモ生産安定のための果肉障害対策技術の開発(PDF : 1126.1KB)
1 研究の背景・目的・目標
モモは果樹の中でも、収益性が高く商品性にも優れ、中山間地域を支える基幹的ブランド作物として重要な位置を占めている。しかし、近年の夏季の異常高温や大雨などによって特に西日本では、「赤肉症」、「水浸状果肉褐変症」など果実内部に異常が生じ品質が低下して地域ブランドとしての商品性を損ない、農家の収益の低下が問題となっている。そこで、これらの障害の発生要因や機構を明らかにし、生産現場で適用できる実用性と普遍性の高い障害軽減対策技術の開発を早急に進め、対策技術マニュアルを作成する。
2 研究の内容・主要な成果
(1) モモの果肉障害の発生要因について、成熟期の高温ならびに水分の影響を検討し、収穫前一か月の高温と降雨による多量の水分が果肉障害の発生に大きな影響を与えていることを明らかにした。
(2) 高温による果実温度の異常上昇を抑制できる酸化チタンを塗布した新しい「機能性果実袋」を作製して、障害軽減の効果を実証した。赤肉症の発生率を慣行袋と比べて約70%軽減した。商品化予定である。
(3) 多量の水分を制御できる「透湿性マルチシート」について、「機能性果実袋」と併用することで、赤肉症の発生率を約80%、水浸状果肉褐変症ではおよそ40%軽減することを明らかにした。ただし、年による気候の違いで効果程度は変動する。マルチ利用で懸念される樹体水分の簡易把握法も開発した。
(4) 果肉障害は外見で発生が識別できないため、出荷前の果実を共振法(音響振動法)により、非破壊的な評価方法を開発した。‘紅清水’では第2共鳴周波数600Hzを閾値とすると水浸状障害の多くを検出できる。
公表した主な特許・品種・論文
(1) 「モモの果肉障害対策技術マニュアル」(2016年2月)
(2)「西日本のモモ生産安定のための果肉障害対策技術の開発 研究成果集」(2016年2月)
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び取り組み状況
(1) 開発した「機能性果実袋」は最終製品が作られ、2016年シーズンに多様な条件の園地、品種などでの検証結果を踏まえたうえで、商品化する予定である。
(2) 「透湿性マルチシート」は、すでに岡山県の一部モモ産地で導入されている。
(3) 非破壊評価法について、利用に関して問い合わせが来ている。
(4) これらの成果については、2015年12月に生産農家はじめモモの研究機関や生産、販売関係者などを対象に成果発表会を行うと同時に「対策技術マニュアル」を作成し、これらを用いて普及を進める計画である。「対策技術マニュアル」:http://www.okayama-u.ac.jp/user/agr/release/release_id2.html
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
(1) 果肉障害のない果実を生産流通させ供給することで、国民に安心して、健康によくおいしいくだものを食べてもらうことができる。
(2) モモ産地のブランドイメージや信頼性を確保することにより、農家の収益を確保できる。
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岡山大学
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