周年放牧等を活用した国産良質赤身牛肉生産・評価技術の開発
- 課題番号
- 25051C
- 研究グループ
- 農研機構九州沖縄農業研究センター、東北農業研究センター、熊本県農業研究センター、琉球大学農学部、帯広畜産大学畜産学部、東海大学農学部、京都大学大学院農学研究科、日本あか牛登録協会
- 研究総括者
- 九州沖縄農業研究センター 小林 良次
- 研究タイプ
- 研究成果実用型A
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- 周年放牧等を活用した国産良質赤身牛肉生産・評価技術の開発(PDF : 937.4KB)
1 研究の背景・目的・目標
肉専用種肥育経営において2%に留まっている飼料自給率の向上は急務である。また、近年健康指向から我が国消費者の食品一般に対する選択行動として過度の脂質摂取を控える傾向がみられ、牛肉に関しても赤身牛肉に対する需要が次第に高まっている。そこで、褐毛和種周年放牧体系の高栄養化により国産飼料率80%以上を実現し、褐毛和種赤身牛肉の特質を表現できる評価手法を開発する。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 暖地無積雪地域、高標高寒冷地域、亜熱帯地域のそれぞれにおいて、褐毛和種去勢牛を用いた国産飼料自給率80%以上の周年放牧肥育技術を開発した。
(2) 褐毛和種赤身牛肉の枝肉断面の外観から筋肉面積の大きさを評価できる手法、及びTBA(チオバルビツール酸)試験紙を用いて3日後の脂質酸化度を予測できる流通に向けての簡易な評価手法を開発した。
(3) 褐毛和種牛肉の熟成程度を異なるアミノ酸含量の比で示す「熟成指標」を開発した。さらに迅速かつ極めて微量なサンプル量で、アミノ酸含量を分析、同様の「熟成指標」を簡単に算出できることを明らかにした。
(4) 消費者が放牧牛肉に付加価値を感じて払う割り増し価格(プレミアム)が45%増しであることを明らかにした。その場合に暖地無積雪地域、高標高寒冷地域および亜熱帯地域のいずれでも放牧肥育は慣行肥育と同等以上の収益性が見込めることを示した。
公表した主な特許・品種・論文
(1)中村好他.離乳後より周年放牧肥育技術を適用して生産された褐毛和種および黒毛和種去勢雄牛の産肉量の比較.日本暖地畜産学会報 58,261-266(2015)
(2)金子 真他.周年放牧肥育牛による放牧草地での牧草摂取量.日本草地学会誌 61. 234-238(2016)
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び取り組み状況
(1) 暖地無積雪地域の周年放牧肥育技術については現地実証試験農家が研究期間中に3頭を出荷し、その後も継続して放牧肥育に取り組む意向であり、現在牛7頭を放牧中である。
(2) 放牧草地管理技術や褐毛和種牛飼養技術等を解説した生産者向け技術マニュアルを刊行するとともに、販売業者や消費者に向けた褐毛和種の放牧牛肉レシピ集を刊行、配布した。
(3) 枝肉断面の外観からの赤身牛肉を評価する手法は、枝肉共励会の審査に複数回適用され、有効性が明らかになったことから、現在の格付システムへの導入を模索する。
4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献
(1) 飼料自給率80%以上の褐毛和種の放牧肥育技術は、肉牛肥育の飼料自給率向上や耕作放棄地・低未利用地の活用に貢献する。
(2) 褐毛和種を用いた周年放牧肥育技術によって良質な赤身牛肉を生産できる技術が、九州から亜熱帯地域で開発されたことによって、赤身牛肉を求める国民のニーズに応えることができる。
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