イネ種子温湯消毒法における高温耐性を向上させる技術の確立
- 課題番号
- 25048B
- 研究グループ
- 国立大学法人東京農工大学、 株式会社サタケ、
富山県農林水産総合技術センター農業研究所 - 研究総括者
- 国立大学法人東京農工大学 金勝 一樹
- 研究タイプ
- 産学機関結集型B
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- イネ種子温湯消毒法における高温耐性を向上させる技術の確立(PDF : 895.8KB)
1 研究の背景・目的・目標
農薬を使用しない水稲種子の温湯消毒法は、廃液処理が不要で薬剤耐性菌にも防除効果がある。しかし高温耐性の弱い種子にはこの消毒法を適用しにくいことや、ばか苗病などには十分な防除効果があげられないとの指摘もある。我々は温湯消毒前に種子の水分含量を低下させておくと高温耐性が著しく向上することを見出した。このことを利用すると、高い防除効果のある高温での種子の処理が可能になる。そこで事前乾燥処理を組み込んだ温湯消毒技術を生産現場で実用化することを目指して研究を行った。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 種子の高温耐性を強化させるための事前乾燥処理の条件としては、40~50℃で加温して種子の水分含量を7~9%程度にすることが最適であることが明らかになった。
(2) コシヒカリやひとめぼれ等の主要な品種だけでなく、モチ米や酒米などの多様な品種の種子に対しても、事前乾燥処理による温湯消毒時の高温耐性の向上効果があることが示された。
(3) 1時間当たり2tの種子を処理できる温湯消毒装置に、事前乾燥処理を組み込んだシステムを構築した。
(4) 構築したシステムを用いて慣行法よりも5℃高い65℃で10分間消毒した種子を、全国4か所の生産現場で栽培したところ、慣行法と同等の十分な収量を確保できることが明らかとなった。
公表した主な特許・論文
(1) 特願 2014-21765 種子の温湯消毒法 (中岡清典、金勝一樹、大石千理、村田和優:株式会社サタケ、東京農工大学、富山県)
(2) 特願 2015-161014 水稲種子の温湯消毒法 (中岡清典、金勝一樹、大石千理、村田和優:株式会社サタケ、東京農工大学、富山県)
(3) 金勝一樹他.水稲種子の水分含量を低下させることによる温湯消毒時の高温耐性の向上.日本作物学会紀事 82(4), 397-401 (2013)
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1) 病害虫の被害が出始めている温湯消毒を導入した地域において、防除効果の高い厳しい条件での消毒が可能になる。
(2) これまでに温湯消毒に適さないとされていた種子の高温耐性の低いモチ米、酒米やインド型品種の種子に対しても温湯消毒を適用することができ、温湯消毒法が安定して広く普及する。
4 開発した技術・成果が実用化されることによる国民生活への貢献
(1) 農薬の使用を軽減した環境に優しい農業の実施が可能となり、環境保全に貢献できる。
(2) 農薬やその廃液処理にかかるコストを低減でき、良質な日本産のコメを低価格で提供することができる。
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