施設園芸害虫アブラムシに対する基盤的防除のための次世代型バンカー資材キットの開発
- 課題番号
- 25042B
- 研究グループ
- 農研機構中央農業総合研究センター、宇都宮大学、
栃木県農業試験場、宮城県農業・園芸総合研究所
株式会社アグリ総研 - 研究総括者
- 農研機構中央農業総合研究センター 長坂 幸吉
- 研究タイプ
- 産学機関集結型B
- 研究期間
- 平成25年~27年(3年間)
- PDF版
- 施設園芸害虫アブラムシに対する基盤的防除のための次世代型バンカー資材キットの開発(PDF : 1071.4KB)
1 研究の背景・目的・目標
長らく薬剤防除に依存してきたアブラムシ類に、近年、薬剤抵抗性の出現が報告され、施設園芸における安定的な天敵利用技術の確立が急務となっている。無害の餌昆虫を用いて天敵を維持しておくバンカー法が基盤的防除法として有効だが、導入天敵コレマンアブラバチを用いた従来法では、対象アブラムシ類が限られること、二次寄生蜂による防除効果の低下、導入の難しさが課題となっている。これらの課題を解決するバンカー資材キットを開発し、イチゴIPMに組み込んだ形でのマニュアルを作成する。
2 研究の内容・主要な成果
(1) 広い範囲のアブラムシに寄生ができ、複数の二次寄生蜂種を回避できる土着天敵ナケルクロアブラバチの大量増殖法を開発し、商業規模での生産体制を確立した。
(2) 植物上に天敵マミーと餌アブラムシをつけた「バンカー型製剤」(これにより購入後すぐにバンカー法を実施できる) について、内容の安定性と商品としての輸送性を両立させる製造法を開発し、特許出願した。
(3) ナケルクロアブラバチとコレマンアブラバチを混合したマミー製剤(アブラバチの蛹の製剤)について、圃場規模での害虫防除効果を示す事例をワタアブラムシで4例、チューリップヒゲナガアブラムシで2例得た。
(4) 前記「マミー製剤」、「バンカー型製剤」のほか、「代替餌付きバンカー植物」と「簡易給水装置」も開発し、これらの施設イチゴでの活用法を示したマニュアルを作成した。
公表した主な特許・論文
(1) 特願 2015-026118 バンカー型生物農薬の製造方法 (手塚俊行、伊藤健司:株式会社アグリ総研)
(2) Mitsunaga, T. et al. Host species-dependent and size-dependent ecological characteristics of Ephedrus nacheri (Hymenoptera:Braconidae) Appl. Entomol. Zool. 50, 465-475 (2015).
3 今後の展開方向、見込まれる波及効果
(1) 現在200カ所以上(17県)で実施されているコレマンアブラバチを用いたバンカー法の欠点を克服し、IPM技術に組み込んだ形での次世代型バンカー法として各種施設園芸で利用できるようになる。
(2) 次世代型バンカー法技術は、大規模施設園芸だけでなく、農薬の不足するマイナー作物、決定的な防除法を欠く有機栽培でも、アブラムシ類に対する基盤的防除手段として適用可能となる。
4 開発した技術・成果が実用化されることによる国民生活への貢献
(1) アブラムシ類への基盤的防除手段として各種施設園芸のIPM体系に取り込まれることにより、農薬使用量の削減(薬剤散布作業の減少)と生産の安定化がもたらされ、生産者には軽労化と収益の安定がもたらされる。
(2) 確固たる技術による農薬使用量の削減と生産の安定化の両立により、消費者や流通業者には国内野菜に対するさらなる信頼が醸成される。
この研究成果を活用しませんか?
この研究に関するご相談や質問等は、以下よりお問い合わせいただけます。
農研機構
中央農業研究センター
TEL 029-838-8939